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STORY PALLET~サイド:シアン~            白兎英雄物語

『それは昔々、遠い昔のお話です』
その昔、アクロニア大陸にはいくつもの国がありました。
『ある所に、小さな国がありました』
これはその中の1つ、とある小さな国の物語。
『その国には、1人の魔女が住んでいました』
剣も魔法も、あらゆる人々が暮らすその国に、
『その魔女はとても強い魔女で』
魔術に優れた、1人の女性がいたという。
『どんな悪者も逃がさない、絶対に懲らしめることから』
国に仕えるその人は、如何なる敵をも追い詰め、慈悲もなく仕留める。
『狩りのする犬、猟犬のようだと』
その姿を例え、彼女はこう呼ばれていた。
『みんなから『猟犬の魔女』と呼ばれていました』
『猟犬の魔女』と。


『しかし、ある時でした』
しかし事件は突然起きた。
『猟犬の魔女は、国の王様とケンカをしてしまいました』
その強過ぎる魔女の力を恐れた王は、国から離れて欲しいと魔女に話した。
『怒った魔女は、国のみんなに悪さをするようになりました』
長年仕えた王の言葉に傷付いた魔女は、国への復讐を試みたのだ。
『国中がメチャクチャになってしまい、みんな悲しい思いをしていました』
家を焼き、魔物を放ち、財宝から人の命まで、奪えるものは全て奪った。
『王様が困っていると、1人の剣士がやってきました』
「どうすればいい」己の無謀さが招いた事態に苦しむ王。
そんな王の前に、1人の剣士が名乗りを上げた。

『剣士は「私が魔女を懲らしめてみせましょう」と言いました』
「王よ、私めがあの魔女を止めてみせます。どうか、ご決断を」



国は、魔女との対決を選んだ。
『その剣士は、見事に猟犬の魔女を倒しました』
激闘の果てに、剣士は魔女を倒した。
『再び国に、平和が戻って来たのです』
「これで終わりだ、猟犬の魔女よ」
『しかし、どうでしょう』
「う、うふふ……終わりですって……?面白いことを言うじゃない……」
『怒った魔女が、剣士に呪いをかけてしまったようです』
「この恨みが続く限り、私は何度でも蘇る!!
 呪ってやる!貴様らは兎だ、猟犬に狩られる獲物だ……永遠に苦しむが良い!!」

『剣士は真っ白なウサギに姿を変えられてしまいました』
そう高らかに嗤いながら、魔女は灰となって消えた。
同時に剣士は、激痛が走ったかと思えば、ウサギのような姿へと変貌していたのだ。

『それを知った王様は、どうにか元に戻せないか』
国へ帰った剣士を見て、王はなんとか元に戻せないか方法を探した。
『国中の魔法使いに訪ねました』
しかし魔女の呪いはあまりに強力で、国の魔術師ではどうすることも叶わなかった。
『しかし、猟犬の魔女より優れた魔法使いは国には居らず』
「なんと愚かなことをしてしまったのだ……どう詫びればいいのだ」
『誰にも呪いを解くことはできませんでした』
「王よ、どうか顔を上げて下さいませ。より良い国になれば、それで満足です」
『せめてものご褒美に、と』
王はその慈悲深さに感銘し、功績を称え、剣士に貴族の地位を与えた。
『王様は剣士を、国を救った「白兎の英雄(びゃくとのえいゆう)」と呼び』
剣士は「白兎の英雄」と称され、大きな屋敷も与えられた。
『大きなお屋敷を与えました』
人々は英雄に感謝し、
『国の人々は、そんな英雄に』
同時に憐れんだ。
『とてもとても感謝しました』
人でもない、獣でもない、そんな異形の姿を見ては
『そして英雄は、人々と幸せに暮らしましたとさ』
「あぁ、なんて可哀想なんだ」と距離を置いていくのであった。


猟犬の魔女とその恨み。

それを倒さない限り、呪いは永遠に続く。

時は流れ、時代は変わり、

それでも尚、その血と共に受け継がれていく、

どす黒い呪いと、真っ白な獣の姿……。



──────

…………

……






ダバババババババァーーーッ


「Σうわわわわわぁっ!!?」バターンッ!


マリーノート顔1
???「……上の空だった意識が呼び戻されると同時に、
    人は熱湯と冷水を同時に浴びた際に冷水、つまりは冷たさの方が
    より敏感に反応するという雑学知識を身をもって学んで頂いたところで、
    大丈夫ですかジアン坊ちゃん?」

ジアン顔6
ジアン「う、うぅっ……確かに、冷たいなと思った矢先に熱いと思って、
    かと思えば、今度は後頭部に痛みを覚えているよ……。
    流石マリーノートは物知りだね、いたたた……」

マリーノート顔1
マリーノート「物思いに耽る余り、水分補給を疎かにしてはいけませんよ?
       頭痛は脱水症状の予兆かもしれません、
       すぐにコチラの淹れ立てのハーブティーを冷めない内にどうぞ」

ジアン顔2
ジアン「気持ちは嬉しいがマリーノート、少し熱過ぎるようだから
    氷を1つ入れて欲しいのだけれど」

マリーノート顔1
マリーノート「まぁ、淹れ立てのハーブティーに氷だなんて。
       冷すことで香りを損ない、更には味を薄めようなど食への冒涜ですよ。
       ハーブティーとそれを淹れたワタクシめに謝罪して下さいませ」

ジアン顔6
ジアン「Σえぇ!?ごめんよマリーノート!!
    それにハーブティーも申し訳ない!温かい内に頂くよ!!」

マリーノート顔2
マリーノート「毎度のことではありますが、こう疑いもせず鵜呑みにされては
       ワタクシ、坊ちゃんの将来が不安で仕方ありませんよ……」

ジアン顔3
ジアン「気に掛けてくれてありがとう、マリーノートは本当に優しいね」

マリーノート顔1
マリーノート「坊ちゃんは馬鹿でいらっしゃいますか?」

ジアン顔1
ジアン「? 馬鹿とは社会の常識に欠けていることだから、
    世間知らずのボクはきっとそうじゃないのかい?」

マリーノート顔2
マリーノート「そこで受け入れてどうするのですか。
       使用人からの罵倒を冷静に分析し、肯定しないで下さいませ」

ジアン顔3
ジアン「肯定もなにも、実際にそうだからね。
    正しいことを言っているのに、どうして否定しないといけないんだい?」

マリーノート顔1
マリーノート「その馬鹿正直さがいずれ苦汁を舐めることにならないよう、
       ワタクシが全身全霊でサポートしなくてはいけないという
       結論が導き出されますね。
       さて無駄話はこの辺りで打ち止めとしまして、
       本日のディナーのご希望はございますか、坊ちゃん?」

ジアン顔4
ジアン「そうだね、今日はハンバーグが食べたいな」

マリーノート顔1
マリーノート「本日のメインディッシュはカニクリームコロッケでございます」

ジアン顔1
ジアン「揚げ物は火傷の危険があるからね、
    作る時は気を付けるんだよ?」

マリーノート顔2
マリーノート「……はい。(無慈悲なまでにボケ殺し……)」



















マリーノート顔1
マリーノート「と、このように天然で馬鹿真面目で無知な
       坊ちゃんことジアン・ラビエント・ウィリアム様と。
       その使用人であるワタクシ、マリーノートを主とした
       日常会話を本日よりご紹介させて頂くこととなりました。
       稀にお時間頂きます際には、うちの坊ちゃんを
       生温かく見守って頂ければ幸いにございます。

       皆様、何卒どうか宜しくお願い致します。
       それでは今回はこれにて、ごきげんよう」

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黒の会話はQ&A

 
  
 
 
「たぁ~ぃまぁ~~~」


ブラウニー顔7
ブラウニー「はぁーい、おかえりなさい……♪
      ちゃーんと連れて行ってくれてご苦労様、ローゾフィアちゃん……♪」

ロズ顔6
ロズ「うぃー♪」

ブラウニー顔6
ブラウニー「それにしても全く………クレノーン。
      早々にアイコンの撮り直しにいきなさい、と言った筈よ……?
      それを今日まで放置して……やっとその装いね」

クレノーン顔11
クレノーン「……めんどい、今までので問題なかろぅが……」

ブラウニー顔6
ブラウニー「大いにあるわよ……」



ブラウニー顔7
ブラウニー「あたしのモチベーションが上がるわ♪」

クレノーン顔10
クレノーン「ワシの怒りもな、蹴飛ばすぞテメェ」



ブラウニー顔5
ブラウニー「それはさておき、連れ出してくれた冒険者ちゃんには、
      依頼報酬をお渡ししなくてはね……今日はスイートポテトよぉ……♪」

ロズ顔1
ロズ「しゅいちょ、ぽぺぽ?」

クレノーン顔8
クレノーン「すい、と……?」

ブラウニー顔5
ブラウニー「その舌っ足らずと横文字耐久の無さ、
      要因は違うのに結果として両者とも発音できていないのは
      何故なのかしらねぇ……?」

ロズ顔1
ロズ「……にぇー、あぁね、あぁね?」

ブラウニー顔5
ブラウニー「あら、何かしら……?」

ロズ顔1
ロズ「あぁね、おひぅにね、じぃじ、おくしゅいもっちぇね、くぅの。
   そぇでね、おやちゅ、いっしょがいぃかぁね、おにぇが、したぃの」

ブラウニー顔6
ブラウニー「あら大変、未だにこの子の言葉が翻訳できないわ。
      ちょっと通訳さん、訳してくれないかしら……?」

クレノーン顔8
クレノーン「誰が通訳じゃ……って、そういや今日じゃったかのぉ……」

ブラウニー顔6
ブラウニー「……?
      それで、結局どういった内容なのかしら……?」

クレノーン顔11
クレノーン「……簡単に言っちまえばのぉ。
      昼に薬届けにじぃさん来るけぇ、
      その分の菓子を用意してくれっちゅーこっちゃ」

ブラウニー顔5
ブラウニー「………あぁ、なるほどねぇ。
      ………今日は来客があるなんて、あたし初耳だわ」

クレノーン顔8
クレノーン「身内の予定を他人に知らせる必要があるとでも?」

ブラウニー顔6
ブラウニー「お黙りなさい人間風情が
      まぁいいわ……ローゾフィアちゃんのおじい様ということは、
      貴方のお父様、ということかしら……?」

クレノーン顔7
クレノーン「いんや、ワシにとってもじぃさん的な立ち位置じゃ」

ブラウニー顔6
ブラウニー「的、立ち位置……?」

クレノーン顔11
クレノーン「……妙に長生きな、若作りな奴でのぉ。
      おいちゃん、それこそ子供ン時から知っとるが、
      ヘタすりゃ父親が現役の時からの付き合いかもしれん……」

ロズ顔3
ロズ「うぃっ。じぃじ、じゅっといりゅ、ゃ…しゃ、しぃ、お……!」

ブラウニー顔6
ブラウニー「あら……エミル族の寿命で考えると、妙なお話だわ……。
      貴方が既に相当の年齢であり、その生前からとするなら
      エミル族の肉体限界なんて超越してrカランッカラーンッ

クレノーン顔8
クレノーン「……論より証拠、見た方が早ぇ」









「じぃじーっ♪」

「会いたかったですよ孫娘ー♪」


ゴッ!!


ヒスイ顔7
???「Σうぐっ……い、いきなり銃で殴るとは何事だぁ……!!」

クレノーン顔8
クレノーン「伯父貴よぉ……ロズを冒険者に鍛える任を預かっとる身として、
      過度に甘やかすんは控えて貰いたいもんじゃのぉ……。
      あと、目の前で暑苦しいし気色悪ぃ」

ヒスイ顔6
???「貴方、そっちが本音でしょう……!?」

ロズ顔2
ロズ「うー……じぃじ、だぁじょぶ……?」

ブラウニー顔7
ブラウニー「あらあら、まぁまぁ……中々悪くない、いい男じゃない……♪
      長生きなのも納得だわ、タイアニアですものね……」

ヒスイ顔2
???「まったく、貴方という男は年配だというのn………」

クレノーン顔8
クレノーン「ん……?」

ヒスイ顔9
???「………」

クレノーン顔7
クレノーン「………」




「………待って下さい、貴方その顔は……」









※ロズちゃんは別室でマイブームの折り紙であそんでます

クレノーン顔8
クレノーン「……そんでヒスイの叔父貴、ワシが若返ってしもぅた原因が」

ブラウニー顔7
ブラウニー「あたしの仕業、神業とでも言おうかしら……?
      ヒスイさん、ね……あたし、マドンネンブラウと名乗っている者よ。
      でも呼びにくいでしょうから、ブラウニーって呼んで頂戴……♪」

ヒスイ顔3
ヒスイ「これはこれは……いつも孫娘や、彼がお世話になっております。
    私は少々特殊な体質なもので、それなりに人生経験も豊富ですが……
    まさか、神と称えられる存在をこの目で見る日が訪れようとは」

ブラウニー顔8
ブラウニー「あらあら……人々は信仰する割に、神と名乗ってもその真実を否定する。
      そんな愚かな生き物である筈が、貴方は信じると仰るのかしら……?」

ヒスイ顔11
ヒスイ「まぁ……確かに、その真偽を確かめる方法はありませんね。
    そうなれば、信じる理由はありません。
    しかし、同時に疑う理由もありませんからね……ふふふ♪」

ブラウニー顔7
ブラウニー「まぁ~、時の流れを悠々と漂っているのねぇ……
      そういう生き方、あたし好きよ……ウフフフフ♪
      あ、良ければこのお菓子、お茶請けに如何かしら……?」

ヒスイ顔8
ヒスイ「スイートポテトですね、お言葉に甘えて頂きます♪」

クレノーン顔8
クレノーン「(馴染んどるのぉ……)」

ヒスイ顔2
ヒスイ「しかし彼は困ったことに、連絡を寄越しませんからねぇ。
    まさかこんなことになっているとは、長年生きていても予想外でしたよ」

ブラウニー顔6
ブラウニー「あらあら……じゃあ、彼やローゾフィアちゃんの身内は
      彼が若返った事実を知らなかった
のかしら……?」

クレノーン顔11
クレノーン「………連絡はしたが」

ヒスイ顔9
ヒスイ「え、」

クレノーン顔7
クレノーン「何も知らんかったら、こんなおいちゃんに姪っ子なんぞ
      預けたりせんじゃろーが……。
      連絡は入れたし、兄弟夫婦はちゃんと知っとる。
      驚かれもしたが、丁度良いっちゅーて話が進んでのぉ……」

ブラウニー顔5
ブラウニー「あらあら、まぁまぁ……適応力の高いご家族だこと……」

クレノーン顔8
クレノーン「……こうなった翌日には、一斉送信したんじゃがのぉ……
      叔父貴よぉ、そろそろ携帯電話の1つくらい持っときぃね。
      なんなら作ってやらんでもないが……」

ヒスイ顔4
ヒスイ「……確かに、今の世の中に携帯電話は必要不可欠といっても良いでしょう。
    しかし、死活問題という程ではないですからね………。
    ……なんですか、電話が使えなくとも別に不備は起きていませんよっ」

クレノーン顔8
クレノーン「今現在起きとるのにか?」







ヒスイ顔2
ヒスイ「そもそもです、真偽はさておいて
    神とは普段、一体何を……いえ。
    そもそも、何の神なのかお聞きしても?

クレノーン顔11
クレノーン「冒険者の観察、だか何だかで居座っとる不審者じゃろ……」

ブラウニー顔6
ブラウニー「……その認識の払拭の為にも、キチンと説明が必要なようね。
      いいわ、神の気紛れでお答えしてあげる……。
      まず、あたしが何者であるかという問い掛けにお答えしましょうか……」

ヒスイ顔1
ヒスイ「一般的な認識であれば、火や水といった元素を司る神や、
    言葉だけでしたら、創造神や……あぁ、土地神なんかもありますね」

ブラウニー顔5
ブラウニー「生憎と、あたしは何処かの人間臭い土地神ちゃんとは違って
      人間の認識としては酷くマイナー、むしろ知られていない存在でも……
      地位としてはそこそこ上位に位置する神様なのよ……?」

      「ヘックショーイッ!」「神様きちゃなーい」


ブラウニー顔8
ブラウニー「貴方達、これまでに『神頼み』をしたことはあって……?
      何かを当てたい時、急いでいる時、事件に巻き込まれた時とか……ね?」

クレノーン顔7
クレノーン「……ガキの時にゃ、深く考えんとやっとったかもしれんが……
      自覚がある内ではないのぉ……神も仏も信じとらん」

ヒスイ顔1
ヒスイ「神頼みというと、神様どうか~……と、内心願ってしまうあれですよね。
    確かに意識してやった覚えがあるかといえばありませんが、
    無意識化で願っていた……ことは、あったかもしれません」

ブラウニー顔6
ブラウニー「そう、人々は誰しもが意思とは関係なく神を求めた経験がある……。
      あたしはね、言ってしまえばその神頼みの神様なのよ……?」

ヒスイ顔2
ヒスイ「……ほう」

ブラウニー顔6
ブラウニー「その人間の神頼み、聞き入れるかはあたしの気分次第……
      機嫌が良ければ叶え、そうでなければ聞く耳なんて持たないわ。
      ……うふふ、非道と思うかしら?」

クレノーン顔7
クレノーン「神とかいう存在なんぞ、今も昔も認識は変わらん……。
      気まぐれで、己の劣化複製品みてぇな人間達を弄ぶ。
      それを今更になって、非道だ外道だと騒ぎはせん……」

ブラウニー顔7
ブラウニー「あらあら……本当、つれないわねぇ……♪
      そんなところも、観察のし甲斐があって魅力的なのだけれどね……?」

ヒスイ顔2
ヒスイ「そんな神頼みの……人々の幸・不幸に関わる神が
    観察とはいえ1人の冒険者に肩入れする、というのは
    如何なものかと……」

ブラウニー顔8
ブラウニー「あら、肩入れという程のことはしてなくってよ……?
      あたしは上位神を始めとする神々の総意の結果、
      冒険者の可能性を見届ける役目を担い、
      優れた冒険者であるこの男を観察対象に決めただけ……」

クレノーン顔11
クレノーン「顔がどうの言ぅとった癖に、偉そうに……」

ブラウニー顔6
ブラウニー「黙らっしゃい………餓鬼が
      等価交換に居候として家事を代行しているけれど、
      特別運気を上げたりはしていないわ……あたしはね、見てるだけよ」

ヒスイ顔11
ヒスイ「……なるほど……中々に興味深いお話です。
    その話が事実であれば、彼やその周りには影響はなさそうで
    安心しましたよ」

ブラウニー顔7
ブラウニー「あらあら……♪」






「おいしゃ、おはぁし、おぁった?」
「……まぁな」
「じぃじ、も、おぁった?」
「はい、終わりましたよー♪」
「……あしょ、べぅ?」
「好きなだけ遊んであけちゃいますよー♪」
「甘やかすなジジィ」











「すっかり日が暮れてしまいましたねぇ……」

「子供の相手っつーもんは、慌ただしいばっかりに
 一瞬で過ぎよるのぉ……」

「久々に元気な姿が見れたのは良かったですが、
 老体には堪えますね」

「……まぁ、それでもそうあれる間は、
 無垢で無邪気なままでいさせてやりたいのぉ」

「しかし、そうも言えないのが大人というもの……でしょ?」

「………まぁな」

「いつ、あの子に真実を?」

「……近々」

「自ら進んで汚れ役を買って出るとは……。
 止めはしないが、あまり背負い過ぎるなよクレノーン」

「悪者になった程度で裁かれるもんなら、むしろ願ったりだ」

「……分かった、私は止めはしない。
 ただそんな話を聞いてしまった以上、
 関係者としてその瞬間に立ち会わせて頂きますよ」

「……勝手にしろ」

「えぇ、勝手にさせて貰います。
 ……あの子はどう受け止めるのでしょうね。
 ローゾフィア……彼女の、父親の真実について……」






キミと、共に、

 
 
「髪、切って欲しいんだ」


ようやく帰るべき家へと帰ってきた彼女は、

帰宅と同時に何食わぬ顔でそう告げた。

そして告げられた側、彼女の目の前に立つ金髪の青年は

「……………は?」

と、数秒の間を置き、そして突然の注文に困惑した。

「自分でもよく分かんないんだけどさ、
 なんとなく……もう、切っても大丈夫なんだろうなって」

「……あぁ、なるほどな」

それだけ言うと、青年はイスやらハサミやら

髪を切る為の準備を始めた。

彼女が彼女自身と交わした約束事。

それが果たされた時、切ると決めた長い髪。

つまりはそうなのだろう、と青年は察した。

「……聞かないの?」

「聞いて欲しいのか?」

「正直、理由が思い出せないから聞かれても困るかな」

「そんな気はした」

「ホント、綺麗に燃え尽きたんだろうね……欠片も思い出せない」

彼女がその長い髪に繋いだ記憶。

燃え上がり、燃え尽きて、

その約束の記憶は彼女から忘却された。

それでも、

「キズとして、因縁を完了させようとしてるのかな……」

「それじゃあ、まるで呪いだな」

「失礼な、祝って欲しいくらいなのに」

「はいはい」

イスに腰掛けた彼女の髪を、

ふわりと弄びつつ青年は、手にしたハサミを

その赤に溶け込ませ………。




チョキンッ






お決まりのドレスワンピースを脱ぎ捨て、軽くシャワーを浴び、

普段とは正反対のラフな服装に着替え。

今から出るのか、と心配の声にはその長い耳を一切傾けることはせず、

彼女は淡々と自宅を後にした。



とはいえ明確な目的地がある訳ではなく、

ぼんやりと夕暮れ時の街を歩くだけだった。

少しずつ灯り出す街灯、すれ違う人、あちこちから聞こえる音、

しかし彼女の気には留まらない。

心は上の空、視線は下を向いたまま、それでも彼女は無意識に……

「………ぁ」

無意識に、身体が覚えてしまったその場所へとやって来た。

ギルド元宮、その入口の傍らに立っている壊れかけのガイドマシン。

毎日のように通っていたその場所は、

今の彼女にとっては懐かしいと感じる反面、

後ろめたさを感じてしまう場所でもあった。

「………」

―――顔、合わせにくい。

そんな、とある人物との気まずさからか、

彼女は逃げるようにその場を離れるのであった。







「オや?」
「ん?」
「見間違いでしょうカ、今あそこに……」







「はぁーーーーー………」

道行く人々が思わず視線を送ってしまう程の、

およそ女子らしくない溜息が聞こえてくる。

街の片隅のベンチにて、彼女は酷く落胆していた。

あの場所に足を運んでから、思い出したかのように気持ちが渦巻いてしまう。

この感情の解決策が見つからず、相談するにはあまりに些細で恥ずかしく、

先程から悩み続けて今に至る。

「………どうしよう」

会いたい、という純粋な気持ちはある。

しかし、向こうはそうではないかも。

むしろ会いたくない……という可能性は十分にあり得る。

そう考えてしまうと……正直、怖い。

それならば、このまま時間と共に忘れてしまうべきなのでは。

「………私は」




コツンッ、と軽い音。




俯いた視線の先、ブーツと思われるものが目に留まる。

誰かが前に立っているのだろう、しかし今は1人にして欲しい。

と、彼女はその相手を無視した。

「……」

スッ……

そんな中、その人物は片膝をつき、そっと彼女の右手を取り………



「お嬢さん、そんな浮かない顔じゃあ折角の美人が台無しですヨ?」



そう、微笑み掛けた。

「っ……!」

聞き覚えのある声、キザだが不思議と嫌味のない言葉。

一気に意識が引き戻され、反射的に顔を上げ、

目の前の出来事を確認せずにはいられなかった。

確認して、彼女は困惑した。

「フフッ、なーんてね♪」

「え……あっ……ぁ、の………」

目の前にいるのは、紛れもなく『彼』だ。

組織の後輩で、仕事の部下で、信頼するパートナーで、

会いたいが会えないでいた相手。

「……随分と、久しぶりだネ」

「………うん」

何と声を掛ければいいのか、どんな顔をすればいいのか。

答えの出ない彼女は、素っ気無く返事することしか出来なかった。

「……場所、変えようか」








気付けば日は沈み、辺りは暗闇に染まっていた。

街から近いとはいえ、夜の平原に人はいない。

此処なら、2人きりで話せるだろう。

誰もいない平原の片隅で、2人は並んで腰を下ろした。

「ガイド君がキミに似た人を見たって話しててネ、
 なんとなく気になって探してみれば……ってね」

「……そっか」

「髪、切ったんだネ」

「うん………似合わない、かな」

「長い髪のキミしか知らないから、違和感はあったかナ?
 でも、短いのも良いね」

「……どうも」

――気まずい、いっそ逃げ出してしまいたい。

怒られることもなく、責められることもなく、

そこにいたのは普段通りの彼だった。

しかし今の彼女には、その「普段通り」が苦しかった。

いっそ文句の1つでも告げられた方が、どれだけ気が楽か……。

「……やれやれ」

そんな心境を察したのか、彼は世間話を止めた。

止めて、彼女を見つめ直した。

「………あの言葉をキミから聞かされて、その次の日だ。
 キミが突然いなくなってしまったのは」

「………」

「キミん家の誰1人でさえ行方を知らず、ボク達は総出で探し回ったものさ。
 探して、それでも手掛かりすら見つからず、何日も経過した」

「………その」

「正直、ボクは怒ってる」

「……!」

「言うだけ言って、勝手にいなくなって、かと思えば帰って来て。
 キミの身勝手は今に始まったことではないにしろ、
 今回は流石に許容範囲を超えてるヨ」

彼の言葉はもっともだ。

もし自分が彼の立場なら、きっと同じことを思うだろう。

「……ごめん、なさい」

だからこそ、その感情を受け入れる義務がある。

そう自身に言い聞かせ、彼女は声を絞り出す。

続くだろう言葉に、わずかに肩を震わせながら……



「でも、それ以上にあったのは……恐怖かナ」



しかし、続く言葉は予想していたものとは大きく違った。

「…?」

その言葉に呆気にとられながらも、恐る恐るに彼を見た。

「もう、傍にいられないんじゃないかって。
 キミという人が、手の届かない場所に行ってしまったんじゃないか……
 正直、怖くて仕方が無かった」

「………」

少し意外だった。

元々あまり本心を見せない彼が、ここまで言うなんて……。

それ程の思いをさせてしまったことを申し訳なく思う反面、

その言葉が妙に嬉しかった。

「キミは器用だし、以前よりずっと強くなった。
 そんなキミには、ボクなんてただのお荷物でしかないんだろうね」

「そんな訳ないだろっ!!」

「……」

「あ………ご、ごめん……」

つい反射的に、力いっぱい否定してしまった。

急に声を張り上げてしまい、引かれてしまったのでは……。

「……ハハハッ、いやゴメンゴメン。
 予想以上に否定してくれたのが嬉しくってネ」

「……否定が前提なのが、なんか悔しい」

「それだけキミを理解してるってことサ」

「なんだよ、偉そうに………フフッ」

――やっぱり彼には敵わないな。

先程まで渦巻いていた感情が、嘘のように薄れていく。

緊張の糸が解けたように、ついつい笑みが零れてしまう。

「……やっと笑ってくれた」

ようやく見せた彼女の笑顔に、

釣られるように安堵の笑みを浮かべて見せた。

「なんだろうね、一気に安心したのかな……。
 色々とゴメンね」

「今更、ボク達に遠慮なんて不要だろ?
 どれだけ時間が空いたとしても、
 ボクがキミのパートナーであることに変わりはないんだからサ」

「うん………ありがとう」

「どういたしまして」









それからしばらく、2人は時間も気にせず語り合った。

これまでの事、そしてこれからの事、

互いが互いに反省に、罰し、許し合った。

「……本当にいいの?」

「うん、キミにとっても難しい問題だろうからね。
 明確な答えが見つかったら、その時に聞かせてくれれば良いよ。
 あの言葉の続き……どんな答えでも、きちんと聞き入れるからさ」

「……心って難しいものだネ」

「だからこそ、じっくり考えてみれば良いよ」

「……時間、貰うね」

「死ぬまで待っててやるよ」

そっか、と彼はケタケタ笑ってみせた。

いつもの愛想笑いではなく、もっと無邪気で子供のような、

稀に見せるその笑顔はとても………

―――いけないいけない、今はそれよりも。

「それで?」

「ん?」

「そっちのオーダーは?
 お互いにそれぞれお願いがあっての、今の話だし。
 次はこっちが聞く番」

「あぁ、そうだったね。
 いやなに、そんな大したことじゃないから。
 ただちょっと……」

「ちょっと?」

「うん………約束を、して欲しくて……」

「どんな約束?」

「………これはボクのワガママだから、
 もちろん無理なら聞かなかったことにしてくれればいい。
 ただ、もし叶うのなら、ボクは……」


その、照れ臭そうに言葉を紡ぐ彼の横顔は、

どうしてか切なそうにも見えた。


でも、だからだろうか………

そんな彼が、酷く綺麗で、見ていると胸が苦しくなるのは……。



「ボクは、キミの傍にいたいんだ」


夜風に掻き消されそうな優しいトーンで、

困ったように微笑んで、

彼は彼女にそう告げた。




「……ダメ?」

「………」

「……?
 おーい、聞いてる……?」

「………聞こえてる」

「なんで顔を覆ってるんだい?」

「わかってるクセに聞くなよぉ……」

「……それで返事は?」

「……………うん」

「ありがとう☆」

「うぅー………」

―――この確信犯めっ!!

「……あ、でも口約束だけってのも味気ないよネ?」

……何を思ったのか、突然そんなことを言い出した。

「え、何……?
 契約書でも書くの……?」

「流石にそこまではしないけど……そうだな……
 指きりでもする?」

なんてね、と彼は冗談交じりに笑う。

しかし彼女の方はというと、

「………指きりかぁ」

どうも真に受けたのか、真剣な様子で何か考え込んでいた。

「ひょっとして本気にしちゃった?
 いいよいいよ、ジョーダンなんだからさ」

「いや……曖昧ではあるんだけどね、
 指きりを用いた契約があったなぁって……」

「へぇ……流石は魔法使い」

「子供の頃に聞いたものだから断言は出来ないけど、
 確か……誰かと一緒にいられる契約……おまじないに近いかな?」

「なんだか面白そうじゃないか、せっかくだからやってみようヨ。
 それ、ボク達で出来るもの?」

「大丈夫だと思う、えーっとね……」

ゴソゴソ、と彼女はスカートのポケットを漁り出す。

数秒後にそこから彼女が取り出したのは、

「……何でリボンと、装飾前の指輪……かナ?
 こんなもの出てくるんだい?」

「街を歩いてる時に、安かったから買った。
 魔法道具の材料にいいかなーって」

「仕事熱心だね……」

「そんなことはどうでも良いよ。
 契約の手順だけど、男性は金属を、女性は紐……今回はリボンで代用ね?
 これをお互いがお互いの小指に付けて、それで指切りするの」

「それだけ?」

「うん」

「……まぁ、変に面倒より良いか。
 付け方とかにルールは?」

「付ける手が……覚え方が子供の頃のままだから不安だけど、
 利き手と反対の手……左手、だった筈」

「左手ね、りょーかい。
 じゃあ結ぶから、左手だして」

「キツくしないでくれよー?」

キュッ……

差し出した小さな左手、

その手の小指を可愛らしい黒のリボンが着飾った。

器用にも均等に結ばれたリボンに、

彼女もちょっと感動を覚えたらしい。

「嫌味なくらいに綺麗に結んだねぇ……」

「褒め言葉として、受け取っておくよ☆」

「はいはい……それじゃあ、次は私だね。
 ほら、手袋とってとって」

「ハーイ」







「サイズが丁度良かったところで、ささっと指きりしてしまおうか」

「掛け声とかは何もないのかい?」

「うーん……あるのかもしれないけど、覚えてないから良いよ」

「そんな感じでいいの?
 契約って、魔術師にとって大事なんじゃなかったっけ?」

「大事だけど、そもそも曖昧な情報の元でやってるからね。
 それに、こういうのは気持ちの問題だし」

「アバウトだなぁ」

「いいからホラ、指出して」

「はいはい」

なんとも落ち着かない様子のまま、2人は着飾った指を交える。

指きり、なんて子供らしいかもしれないが、

それでも今の2人にとっては、

「……これからも、よろしくネ」

「こっちこそ、また迷惑を掛けさせてもらうよ」

その時間は、心地よいヒトトキだった。

「………そうだ、まだ言ってなかったネ」

「え?」












「おかえり、ビブリア」

「……ただいま、アイアス君」


続きを読む

この素晴らしい出会いに福音を!

エラトス顔6
エラトス「はい!どうやら少々ノイズが入ったようで、
     前回は別時間軸のとある記録が流れてしまったようだが
     気にせず続きいくぞー!!」

ビブリア顔2
ビブリア「誰に向けて言ってるの?」

エラトス顔1
エラトス「禁じられた箱に残されし、最後の希望の如き存在にだな。
     それはさておき、どこまで話したんだったか?」

ビブリア顔2
ビブリア「えっとね、カナデちゃん?が、可愛い女の子に会いたくて
     頑張るぞーってなったところまでかなぁ……」

エラトス顔1
エラトス「ざっくりバッサリなおさらいご苦労、じゃあ続き話すぞー」









エラトス顔13
エラトス「捜索再開……は、良いんだがな、もう知り合いの当ては尽きた。
     ここからは出たとこ勝負、手当たり次第に体当たりで探していくぞー」

カナデ顔6
カナデ「うん!よーっし、私も頑張るぞー!!」

エラトス顔9
エラトス「となると、まずは順番に現場に戻ってみるか……
     最初は中央、次は南側だったな?」

カナデ顔9
カナデ「うん、そうだよ。
    そこから毎日、必ず前日と違う場所から聞こえてたの」

エラトス顔13
エラトス「場所は日替わり、連日同じ場所には留まらず、っと……。
     何か法則性でも分かればいいんだが、そう簡単にもいかないか」

カナデ顔1
カナデ「どうしよっか?
    とりあえず、まずは街の中央に行ってみる?」

エラトス顔9
エラトス「そうだな、それが無難でベストだろう。
     情報を探しつつ、ついでに街の巡回を担当したけいさt………
     おっと、アクロニアは騎士団だったな。
     そういった人間にも聞き込みしてみるか」

カナデ顔1
カナデ「騎士団さんかぁ……なんだか話すの、少し怖いかも……。
    ちゃんとお話できるかな?」

エラトス顔9
エラトス「なに、街の治安を守る組織の人間だ。
     この街で過ごす以上、街の民をそう無下にはしないだろうよ。
     まぁ、しようものなら土地神として少し仕置きするところだがな。
 
    ……しかし、なんだ。
    今日この辺、やけに人多くないか?」

カナデ顔1
カナデ「なんだろう………あ、見てあれ!
    あそこ、なんだか人が集まってるみたい……」

エラトス顔9
エラトス「こんな街中で野次馬とは、ケンカか?」

『なぁ、これ何の騒ぎ?』『なんでも人が倒れたって』
『えー、やだ怖ーい』『貧血とか?』
『いや、それが急に前触れもなく倒れたんだってさ』
『なんか背中にでっかいゼンマイが付いてる子みたいだぜ』



エラトス顔9
エラトス「………」


『ゼンマイ?』『何だそれ』
『あーあ、綺麗なヴァイオリンだったのになー』
『演奏の途中で意識を失うなんて、可哀想……』
『綺麗な燕尾服だし、何処かのお屋敷の使用人かしら?』
『若いのに苦労してる坊主だな』『え?女の子でしょ?』
『回復魔法でも目が覚めないって、やばくないか……?』
『混成騎士団に連絡しとこうぜ』



エラトス顔13
エラトス「………悪いカナデ、少し用事が出来てしまった。
     すぐ戻るから待っててくれ」

カナデ顔6
カナデ「えっ?あっ、代理さん、そっちは人混み……」

『少し通してくれー……すまん、道を開けてくれー……
 ……あぁ悪い、コイツの保護者の者でして……』











「この度は、本当に申し訳ございませんでしたぁーっ!!」



エラトス顔11
エラトス「俺はちゃーんと言った筈だぞ、ゼンマイが切れる前に帰って来いと。
     動脈のそれに等しいゼンマイが切れれば、エネルギー諸々が途切れ
     機能停止は必須、回復魔法やポーションの類では対処不能。
     巻き直せば解決するが、その事を知っているのは俺達くらい。
     部外者への迷惑は控えるよう、お前の主人も散々言ってきた筈なのに
     どうして今回のような事態になった?ん?」

ビュート顔4
ビュート「は、はひっ……その、本日は、あのですね、
     調律と気候と乾燥と気分が一定数値を超えまして、こっ……ここ数日間で、
     最も演奏に適していると判断しまして……」

エラトス顔11
エラトス「ふむ……それで?」

ビュート顔4
ビュート「少し試奏するだけの予定が、高揚によるエラー発生に伴い、
     意識のプログラムが全て演奏に集中する事態となり、
     その結果が本日の事態でございます……」

エラトス顔13
エラトス「………話は理解したぞ」

ビュート顔4
ビュート「あの、あのあの、どうか、どうかご慈悲を……!!」

エラトス顔15
エラトス「バイオリン、楽しかったか?」

ビュート顔5
ビュート「はいでございます!!」

エラトス顔11
エラトス「反省の色が見えない、有罪」

ビュート顔4
ビュート「Σひぎゃあーーーっ!!
   で、ございますぅーーーーーーっ!!」







「あのぉ……」





エラトス顔9
エラトス「おぉ、悪い悪い。
     ……そんな離れてないで、こっち来いよー?」

カナデ顔1
カナデ「う、うん……
   (誰かが怒られてると、私まで気まずくなっちゃうなぁ……)」

ss20170619_000537.jpg
ビュート「………あ、こちら段差がございますので
     通過の際はご注意下さいませ」

カナデ顔6
カナデ「うん、ありがt…ガッ!
    きゃっ……!」

ビュート顔3
ビュート「!! 支えさせて頂きます!!」ポフッ

カナデ顔1
カナデ「うぅ……(………あれ)」

エラトス顔9
エラトス「おーおー、大丈夫かお前等?
     手当て必要か?」

ビュート顔1
ビュート「……破損被害率0%、姿勢安定、プログラム正常、
     当機の無事を確認しました、問題ありません」

エラトス顔9
エラトス「よし、カナデはどうだ………カナデ?」

ビュート顔4
ビュート「はっ……もしや、転倒の際に負傷されましたか!?
     それとも、支える際の力加減の配分ミスで痛みましたか!!?」

エラトス顔9
エラトス「昔の名残でお前、バカみたいに怪力だからなー。
     油断すると骨折を通り越して粉砕しても可笑しくは……って、
     言ってる場合か、おいカナ……」




「やっと、見つけたよ」




ビュート顔1
ビュート「……あの、お客様?」

カナデ顔9
カナデ「ずっと探してたの、あなたのこと。
    こうして会えて、嬉しいな♪」

エラトス顔9
エラトス「おいカナデ、話が見えないんだが?
     ……あぁ、もしかして会いたがってた件か?
     確かにコイツのことで正解だが……」

カナデ顔9
カナデ「あれ、そうだったの?
    すっごい偶然だね!」

エラトス顔9
エラトス「そういう意味じゃなかったのか?」

カナデ顔3
カナデ「あのね店主代理さん、私が探してた不思議な音……


    あれ、この子から聞こえてきてたみたいなの



エラトス顔9
エラトス「………は?
     ………え、マジでか?」

カナデ顔2
カナデ「さっき受け止めて貰った時、この子から微かにだけど
    聞こえたよ、私の聞いたあの音がね♪
    音楽の守護魔の私が言うんだもん、間違いないの!」

エラトス顔12
エラトス「待てまて、話が背負い魔ブースト装備してるのかってレベルで
     加速し過ぎて追い付けてないんだが?
     え、なに、不思議な音とやらは機械音だったのか?」

カナデ顔1
カナデ「うーん……機械、じゃないと思う。
    なんて言えば分かり易いのかなぁ……
    金属よりは軽くて柔らかくて、木よりも硬くて重みがあって、
    弾むような、響くような、ゆっくりで単調なんだけど
    音が煌めいてるみたいな、すっごく不思議でとっても綺麗な音……

    ………石の、音色に似てるような……?」

エラトス顔9
エラトス「(………まさか。
      しかし、だとすれば……だったら何故……)」


エラトス顔13
エラトス「………ダンビュライト、ここ1週間
     家や店に居る以外、何処で何をしていた?」

ビュート顔1
ビュート「当機の1週間の行動データですね、確認開始致します………
     設定時間中はリベルタス堂の宣伝及び案内作業、
     イレギュラーとして2日前、3日前、6日前には
     道案内のアクションも追加で行っております。

     また、設定時間外の自由行動におきましては
     自主鍛錬としましてバイオリン演奏を試みましたが、
     音出し段階より音程の不安定を確認、
     気候・気温・湿度などの要因から演奏を中断し街の散策へと行動を変更。

     行動範囲はアクロポリスシティに限定、
     主な活動場所は1週間前より順に、
     街の中央、次に南門付近、次にh「もう良い、分かった」

エラトス顔13
エラトス「あーーー………つまり、だ。
     この1週間は街にいて、バイオリンを少し弾いてはすぐ止め、
     その後は街をウロウロしてた、と……そういうことで良いか?」

ビュート顔2
ビュート「はいでございます!」

エラトス顔13
エラトス「次にカナデ、お前に確認するぞ。
     えーっと……お前がこの街にやって来たのが1週間前で、
     その時に謎の音と、共に弦楽器の音を耳にした。
     聞こえたであろう場所に向かうも発生源が見つからず、
     同じ出来事がそれから毎日続いていた。
     ここまで間違いないか?」

カナデ顔10
カナデ「間違いないよー!」

エラトス顔9
エラトス「それじゃあ、もう1つ。
     音楽の守護魔カナデ、お前はもしかして
     オルゴールに縁……なにか、思い入れや関連性はあるか?」

カナデ顔1
カナデ「オルゴール……?
    ………あ、でも、分かる気がする……。

    はっきりと、覚えてるわけじゃないんだけどね、
    私が初めてこの姿になれた時、すぐ傍には小さなオルゴールが
    あったような気がする………。
    小さなお家があって……そこには、オルゴールや、
    綺麗なお人形さんがいたんだ………。
    優しい音色が響いてて……でも、気付くと私は
    この街の近くの草原にいた……」

エラトス顔9
エラトス「そこまで聞けば十分だ、ありがとな」


エラトス顔13
エラトス「……導き出された答えとして、
     まず『カナデの聞いた不思議な音』について、
     答えは『DEMであるダンビュライトの心臓部のオルゴールの音』
     合わせて『ダンビュライトの演奏するバイオリンの音』である。
     次に『音の発信源が見つからなかった』ことについては、
     これはもう『偶然が重なり、入れ違いが続いた』としか言えねぇな……。

     しかし、ここで1つの疑問が浮上する。
     ダンビュライトの心臓部であるオルゴール、
     その音色は普通であれば聞くことはまず出来ない。
     では、何故カナデにはその音が聞こえたのか?」

カナデ顔1
カナデ「……?
    えっと……私が音楽の守護魔で、耳がすっごく良いから?」

エラトス顔9
エラトス「それも正解要素の1つだが、満点ではない。
     100点満点の答えは、
    『カナデは守護魔であると同時に付喪神である』……と、
     いったところだな」

カナデ顔6
カナデ「つくもがみ……?」

ビュート顔1
ビュート「付喪神、長い年月を得た物に神や精霊、霊魂が宿った存在を指す……
     で、ございます」

エラトス顔9
エラトス「一般的に見掛ける守護魔は精霊や霊魂とはまた異なる存在なんだが、
     カナデ……今ココにいるお前個人という存在は、少し特殊みたいだな。
     まぁ、恐らく元々はダンビュライトの心臓部となっている
     オルゴールの付喪神だったお前が、守護魔として具現化。
     予兆はその前から出ていたようだが、完全な具現化に至る
     その発端は………多分、ダンビュライトを転生させる時に
     俺の力が変に反応しちまったんだろうな……。
     カナデは付喪神としての本能から、無意識に本体である
     オルゴールに吸い寄せられ、この街へと辿り着いた」

カナデ顔1
カナデ「(わ、私以上に私のことに詳しい……本当に何者なのかなぁ……)」

エラトス顔9
エラトス 「また、ダンビュライトの心臓部はオルゴールでありながら
      その音は聞こえない……正確には、
      耳では聞き取れない程に微かにしか音が流れてない、だが。
      しかしながら、ダンビュライトは人と同じく感情で動いている。
      感情の高まりからオルゴールの回転速度も並行して加速、
      心音と同じでその分だけ音も大きく激しくなる訳で。
      コイツの場合、バイオリンを弾く楽しさから感情が高まり、
      オルゴールの音が……それでも普通は聞こえないんだが
      一定時間だけ増大した」

ビュート顔3
ビュート「な、なるほど……?」

エラトス顔9
エラトス「そして、だ。
     増大したことによって感じ取れた心音と、
     一瞬のみ響いたバイオリンの音色。
     その2つの音を同時に聞くことが出来たのが、
     オルゴールの付喪神と音楽の守護魔という
     2面を持ち合わせたカナデ、お前だけだった……という訳だ。      

     ………あぁ、2人共よくわかんないって顔だな。
     そうだな、ダンビュライトというDEMにはオルゴールが装備されてて、
     そのオルゴールにはカナデって憑依者がいる。
     本当は御魂の認識に近いんだが……お前等は知らないよなぁ……
     ともかく、まぁそんなゆるーい認識でいいぞ。
     安心しろ、完璧に正確に理解しろとは言わねぇから」

カナデ顔4
カナデ「うぅ~ん……なんか、なんとなくなら分かったような、
    何が分かんないのかが分かんないような、難しいよぉ……」

エラトス顔10
エラトス「細かいことは追々理解していけば良いさ。
     お前にとって今大事なのは、ずっと探していた音の正体、
     そして会いたいと興味を抱いていた当人が目の前に居る、と
     いう事実じゃないか?」

カナデ顔5
カナデ「……フフ、そうだね♪
    ようやく会えたんだもの、今はそれで十分だよね」

ビュート顔3
ビュート「喜ばしい空気の中、大変申し訳ないとは思いますが発言させて頂きます。
     あの、ダンビュライト、お客様の情報を始めとします
     事の経緯や情報の共有が不十分であり、
     お2人の感情の共感などの行動が不可能となっておりまして、
     その………どうしたら良いです?」

エラトス顔13
エラトス「ふむ……これからどうしたいかはカナデ次第、
     カナデの行動からどうしたいのかはダンビュライト次第、だな。
     ……その為にも、まずは自己紹介じゃないか?」

ビュート顔1
ビュート「なるほどでございます」

カナデ顔3
カナデ「それじゃあ、改めてご挨拶……だね♪
    私はカナデ。音楽が大好きで、あなたと仲良くなりたいんだ」

ビュート顔2
ビュート「当機はダンビュライトと申します!
     愛称としまして、我が主人よりはビュートと呼ばれております。
     また、他にも「DEM子」や「従者」などと呼ばれることもありますので、
     どうかお好きな呼称で呼んで頂ければと思います!」

カナデ顔1
カナデ「えぇっ、あとの2つは可愛くないよ……。
    ……じゃあ、まずはダンビュライトちゃんって呼ばせてもらうね?」

エラトス顔9
エラトス「(何で「まずは」?)」

ビュート顔1
ビュート「かしこまりました!
     ダンビュライト、バイオリンに限定されますが音楽と、
     もふもふの動物とオイルを好んでおります。
     不出来な部分もありますが、お見知りおき頂ければ
     光栄でございます、カナデ様」

カナデ顔2
カナデ「こぉーら、ダンビュライトちゃん!
   『様』だなんて、そんな堅苦しい呼び方しちゃダメよ?
    私のことも、もっとフレンドリーに呼んで欲しいな♪」

ビュート顔3
ビュート「し、しかしでございます……親しき中にも礼儀あり、
     とあるように、親睦を深めましても忘れてはいけないことも……」

エラトス顔15
エラトス「面白そうだな、よしダンビュライト!
     今日ぶっ倒れたペナルティーとして命令だ、
     これから『カナデ様』呼びは禁止だからなー」

ビュート顔4
ビュート「Σほぅわっ!?
     え、じゃ、じゃあ………カナデ、殿…?」

カナデ顔4
カナデ「その呼び方もやーだ!
    むぅー……呼び捨て、とは言わないけどさ、
    せめて「カナデちゃん」とか呼んで欲しいの……だめ?」

ビュート顔4
ビュート「あわわわっ……ごめんなさいでございます……!
     しかしながらダンビュライト、不慣れ故に恐れ多さから
     エラーが発生してしまいそうでございますよぉ……」

カナデ顔4
カナデ「むぅーーー……」

ビュート顔4
ビュート「あわ、わ、わっ………えーっとえーっとでございます……
     カ……カナ………」

カナデ顔1
カナデ「カナ……?」

ビュート顔4
ビュート「カナッ……カナ、デ、ちゃ………」

カナデ顔9
カナデ「(ワクワク……!)」

ビュート顔3
ビュート「うぅーーー………ハッ」




ビュート顔5
ビュート「カナデちゃん様!!」

エラトス顔13
エラトス「えらくダイナミックに不時着したなーオイ」




カナデ顔5
カナデ「んー……まぁ、あんまり無理させちゃうのも可愛そうだもんね。
    勿論、慣れてきたらカナデって呼んでくれても良いのよ♪」

ビュート顔2
ビュート「かしこまりました、カナデちゃん様♪」

カナデ顔6
カナデ「(むむぅー……手強いかもしれない……)」

エラトス顔9
エラトス「………ふむ。
     カナデ、今回の依頼料についてなんだが、
     俺からの要望としては『ダンビュライトと仲良くしてやって欲しい』
     たまにで良いから遊びに来たり、何かあった時はコイツの相手をして
     くれれば……と、思ってるんだが、どうだ?」

カナデ顔9
カナデ「! うん、勿論だよ!!
    むしろ、ここまでして貰って良いのかな?」

エラトス顔10
エラトス「最初に言ったろ?
     この店での報酬は『双方が妥当と判断、納得した物』であると。
     俺が希望を提示し、それで納得したのならそれで良いんだよ。
     あぁ、ダンビュライトはどうだ?」

ビュート顔2
ビュート「異論ございません、エラトス神。
     お友達……と、これから沢山会えると思いますと、
     大変嬉しく思います♪」

エラトス顔9
エラトス「決まりだな」

カナデ顔3
カナデ「えへへ、ダンビュライトちゃん!
    早速だけど、色々お話……聞きたいな♪」




…………………

……………

………










ss20170619_002925.jpg
エラトス「……で、それから定期的にカナデは店に遊びに来るようになり、
     よく2人で楽しそうにやってるぞー。
     ダンビュライトのバイオリンとカナデの歌で、賑やかなもんだ」

ビブリア顔1
ビブリア「ふむふむ……2人の因果関係も、中々興味深いねぇ……。
     でも、それ以上に2人が仲良くなれたのは良かったなって思う。
     こういう巡り合わせも、神の気まぐれだったりするのかな?」

エラトス顔1
エラトス「俺が知ってる縁結びのだと、頭かた………真面目過ぎるから、
     運命として事前にそう決まってた可能性が高いけど、
     他の縁結びにはそういった気まぐれを起こす奴もいたかもしれねぇし、
     今度聞いてきてやろうか?」

ビブリア顔2
ビブリア「ロマンの欠片もないからやめて。
     もぉー、ほんっと神様ってば神様なんだからぁー……」

エラトス顔4
エラトス「神様(おれ)を別称みたく使うなっ!!」

ビブリア顔1
ビブリア「あはは、ごめんってば。
     ……ますます、早く帰りたくなってきちゃった」

エラトス顔7
エラトス「……安心しろ、その願いは成就される。
     見てみろ、出口だ」



ビブリア顔2
ビブリア「………やっと、『ただいま』だね。
     そうだ神様、戻ったらお願いがあるんだけど……」






~あとがき~

ようやく書き切れました、今回のお話ヾ(*´∀`*)ノ
カナデちゃんをお招きする機会を入手した時点で
頭の中で大まかな構図は組み立てていたので、
話自体は結構以前から練ってたことになりますねー……?

我が家はアニバーサリーハートのカナデちゃんですが、
他のカナデちゃんだと一緒にオルゴール(家具)も入手できてたような……?
と、曖昧な情報と、我が家のDEM子の設定が合わさり、
今回のオチとさせて頂いております。

加えての、やっと主人公……!
やっと帰って来れたよビブリアさん……長かったねぇ……;
彼女に何があり、何処で、何をしていたのか。
その辺のお話も追々やっていきましょ~。
それでは今回はこれにて!!

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as quick as lightning(エルさんとのコラボ企画)


人々が眠りにつき、静寂に包まれる真夜中。

雲に覆われた空と、時折差し込む月明りが妖しくも美しい日だった。

そんな月明りさえも差し込まない、暗く深い森の中。

たまに微風が吹く程度のその場所で、


『ガキィィィィ………ィイーーーンッ!!』


疾風を巻き起こし、研ぎ澄まされた武器を構え、

殺気と共に牙を剝く2つの影があった。

片方、長い金髪に茶色い獣の尾と耳を携え、両手には禍々しく巨大な爪を構える、

鋭くもどこか儚げで美しい青年。

対するは、鈍く輝く銀の刃、黒い帽子に黒いマント、背には身の丈以上の刀身、

不気味な御面で素顔を隠した不気味な男。

異なる外見、異なる武器、されど共通点が1つ。


『シュッ……!!』


『カタタタタタッ!!』



両者、どちらもイレイザーであった。


『ブォンッ………!!』


影に潜み、闇に生きる2人の抹殺者。

空を裂き、喰らい付き、刃を振り下ろす。

暗闇に包まれた空間で、視ることが困難な状況で、音さえ追い付かない速さで、


『ザァッ……』


沈黙を保ったまま、2人の男は人知れず闘っていた。

「………」

「………」

2人に面識はない、敵でもなければ味方でもない。

偶然、同じ時に同じ場所に居合わせただけだ。

そんな2人が何故、闘っているのか。

理由は至ってシンプルだ。



相手は強い。

故に、挑みたい。




人はおろかモンスターさえ寝静まったこの場所で、

男達は遇い見えた瞬間、相手を見つめ、武器を構え、

微かな風で舞い上がった木の葉がふわり……と地面に落ちた瞬間に駆け出した。

僅かな死角から襲い掛かるクローの一撃と、それを最低限の動きで回避。

回避した勢いのまま突き上げられる短剣、瞬時に回し蹴りで弾くと共に距離を取る。

呼吸を整える間も与えず、どちらかが仕掛ければ防ぎ、そして仕掛け返す。

そんな攻防に始まった闘いは、果たしてどう終結するのか………。
















2時間は過ぎただろう。

今、2人の男は沈黙の中で対峙していた。

どこか、不機嫌そうな視線を送りながら………。

「………おい」

そんな沈黙を破ったのは、御面の男であった。

男の不意の一言に、青年…ネイリの耳はピクリと反応する。

「………」

「こちとら餓鬼の遊びに付き合う気ぃはない、やるならもっと本気で掛かって来ぃ」

その口調は酷く荒々しく無作法で、お世辞にも感じの良いものとは言えなかった。

しかしネイリは表情一つ変えないまま、その言葉をじっと聞いていた。

「………だんまりか」

少々呆れ気味にそう呟くと、男は小さな溜息を




『パキィンッ!!』




………溜息を、零すと同時だった。

その砕ける音は、突如として辺りの空気を一変させた。

はらりはらり、顔を押さえる右手の隙間から、御面の破片は零れ落ちる。

割れた隙間から覗く灰色の眼は、対峙する青年をじっと睨みつけていた。


『刹那』

発動の瞬間に間合いに入り、一撃必殺とも成り得る攻撃を与える

イレイザーの攻撃スキルである。


回避したとはいえ、相手に攻撃の隙を与え、寸前まで反応することが出来なかった。

その事実が男に、クレノーンに与えたのは



相手を少々侮った己自身への憤怒と、

確固たる強さを示した青年への期待だった。




面白い。

クレノーンは内心、笑みを零した。


『ッカァン!!』


しかし、表には決して表さず。

砕けた御面を乱暴に投げ捨てたクレノーン。

そして一層に殺気立った瞳は相手に向けたまま、背負った刀に手を掛ける。

対するネイリは、鋭さを増した殺気に、微かに逆立つ尾を鎮めるかのように構え直す。

今度こそ、互いに本当の意味での真剣勝負になるやもしれない。

張り詰めた糸のような緊張が、

時の流れすらも繫ぎ止めているかのように辺りを張り巡る。

その先にある、勝利を手繰り寄せるのは果たして……



「タ~ヌキ~~~ッ!」



果たして……


「……?」

「………」

緊張の糸を容赦なく引き千切る、あどけない声が木霊する。

2人は声のする方へ同時に顔を向ければ、

「「……………」」

思わず2人は固まった。

そこには茶色いバスケットを抱えたまま走るタイニーと、

それを追い掛けるウメボアの群れ。

そんな、異様な光景が広がっていた。

「……聞いてみるが、あのクマ公は知り合いっちゅーことでえぇんかのぉ」

「…………はぁ」

ネイリは返答の代わりに溜息をつく。

「タヌキータヌキー!ボク、ちょーっとだけピンチかもー!

 手を貸してくれると嬉しいなーっ!!」

本来、あのタイニー…正確にはタイニーゼロは、

ウメボアくらいなら容易に倒せるだけの実力を兼ね備えている。

その筈なのに、何故か追われている。

そもそも、どうしてこの場所に居るのか。

あらゆる理由が分からない。

分からない、がこのまま見捨てるわけにもらしい。

仕方ない、と言わんばかりにネイリはウメボアの群れへと向かおうと……



『ピシィンッ…!』



「……!」

身体が動かない。

何故、一体何が………

「悪いの、ちぃとばかし動かんときぃ」

身体の自由を奪った犯人、それはクレノーンであった。


イレイザーのスキル技の1つ、相手の自由を一時的に奪う技『影縫い』


何の為にスキルを、しかし今はそれ所ではない。

このままでは、タイニーゼロの身が危ない。

ネイリに僅かな焦りと苛立ちが見える。

そんなことは気にもせず、クレノーンは涼しい顏でネイリに背を向ける。

「………それ以上は、間合いじゃけーのぉ」


『シャリンッ………』


背負っていた長い刀剣をすらりと抜いた。

クレノーンは正面を向き直し、一呼吸置き、

その場で軽く弾みを付け、音を立てずに駆け出した。

そして、




『シュンッ………!!』




一瞬、空を裂く音と青白い一閃が辺りに広がる。



かと思えば、ドサッドサッと重々しい音があちらこちらから聞こえてくる。

顔を伏せていたタイニーゼロは、ゆっくりと顔を上げた。

するとそこには、先程まで自分を追い掛けていた筈のウメボアの群れが、

1匹残らず倒れている光景。

そして、目の前に自分を庇うかのように立ち塞がる黒い服の男。

状況はよく分からないが、助かった、ということは確かなようだ。

「……えっと、おじちゃんはタヌキのお友達?」

「………いや」

刀を鞘に納め、クレノーンは質問に対し、目線を合わせるようにしゃがんで返答する。

「違うの~?あ、ボクはタヌキのパートナーだよぉ~よろしくね~」

「ほぉか……」

「ボク、タヌキに差し入れしようと思ってここまで来たんだけど、

 暗くてよく見えなくって………

 間違えてウメボアの寝床に迷い込んじゃったんだぁ。

 大事な差し入れだから守らなきゃって、

 そうしたら手が塞がっちゃって戦えなかったのぉ~。

 でも、おじちゃんが助けてくれて助かったよ~ありがタイニー!!」

「………おいちゃん、別になんもしとらんぞ。

 勝手に助かっただけじゃ、運が良かったの」

「そうなのぉ~?」

「………ほれ、さっさと差し入れとやら渡して来ぃ。向こうで待っとるぞ」

「あっ!そうだった、タヌキー!!」

「………」

影縫いが解除され、身体の自由が戻ったネイリは、

先程より1人と1匹の会話を離れた位置で見守っていた。

事態の収束、そして相手に戦意が無くなったことを察し、

自身もまた構えることを止めたようだ。

とてとてっ、と近付いたタイニーゼロは「はいっ」と、

先程から大事そうに抱えていたバスケットを差し出してきた。

ネイリはそれを受け取ると、蓋を開けて中を確認する。


甘い香りが鼻孔をくすぐるそれは、どうやらチョコケーキのようだ。


「あのね、最近タヌキは夜に1人で修行に行っちゃうでしょ?

 ボクも何かお手伝いできないかなって思ってね、お姉さんに相談したら

『応援をしに行ってあげるだけでも、きっと力になれると思うよ?

 あ、丁度良いや。少し早いけど、よかったら2人で一緒にどうぞ』


 って、貰ったんだぁ~」

「………」

「疲れた時には甘いものが必要だもんねぇ~。

 ボクも疲れちゃったし、一緒にたべよ~♪

 あ、おじちゃんも一緒に……」

思い出したかのように振り返れば、クレノーンは懐からキセルを取り出し、

一服している最中だった。

「……やれやれ」

「あれ、おじちゃんどこ行くのぉ?」

「……興が醒めた、帰る」

「え~?帰っちゃうのぉ~?ケーキあるよ~?」

「いらん」

「えぇ~~~」

「………」



「………おい」



その時、初めてネイリはその場で声を発した。


呼び止められたクレノーンは、スッ…と思わず歩みを止めた。

そんな男の足元へ駆け寄ったタイニーゼロは「はい、これ~」と、

ある物を差し出した。

「……ケーキはいらん言ぅた筈じゃが」

「お礼だって~。タヌキ照れ屋さんだから、ボクが代わりにお届けだよぉ~」

「礼をされることはn「いいから受け取れ」

淡々とした言葉。しかし、じんわり感じられる威圧感。

甘いケーキとは対照的な、まるでコーヒーの如く、その一言は酷く苦いものだった。

そんなに何を怒っているのか…そう不思議そうに思いながら、

男はこの予想外の事態に少し考えた。

考えて、火に油を注いでも面倒で疲れるだけ、と内心呟き、

黙ってケーキを受け取ることにした。

男がケーキを受け取る様子をじっと覗うネイリと、

そんな青年の視線に気付き、視線を移すクレノーン。

互いに戦意は感じられないものの、まだ何処か緊迫したような沈黙。

しかし、自ずと2人の口は動いた。

「………次は、決着を付ける」

「………今以上に強くなれ、小僧」

そんな短い言葉を交わすと、

クレノーンは手掴みのケーキをかじりながら、2人に背を向けた。

そして、そのまま夜の闇へと姿を消していった……。




















「………」

「タヌキ、今日はいつも以上にだんまりだねぇ。

 どうしたの?お腹痛い?」

「……違う。ただ、自分の言葉に驚いていただけだ」

「ん~?何がびっくり驚きだったのぉ?」

「それは………いや、なんでもない」

「そっかぁ。ねぇねぇ、それよりタヌキはあのおじちゃんとケンカしてるの?

 仲悪い?」

「………いや」

「じゃあ、お友達?」

「………違う」

「えぇー?じゃあ、どういう関係なのぉ~?」

「………」

「ねぇ~ってば~」

「………ただの」







「ただの、好敵手というやつだ………ただし。


 お前が来る前は……だがな」










~あとがき~

はい、皆様お久しぶりです(`・ω・´)
今回は今進めてる話から少し寄り道しまして、コラボ第2弾をさせて頂きました!
コラボして下さいましたのは、相互ブログ『夢の中へ繋がる世界』
エルさん、そしてErのネイリ君とタイニーゼロちゃんです!
本当にありがとうございましたヾ(*´∀`*)ノ{めっちゃ楽しかったです!
ネイリ君達について気になりましたら、URLよりエルさんのブログへワープ、
しかとその魅力を堪能して頂ければと(

今回のコラボは、キャラクターさんをお借りして書かせて頂いた、
といった具合でしたが、本当に好き勝手書かせて頂いてしまいました…;
こういうバトルシーンが好きで、男同士の決戦…というのも好きなので、
少し張り切り過ぎてしまいました(苦笑)
ちなみに、タイトルの「as quick as lightning」とは「疾風迅雷」
事態の変化が急なこと、を意味する四字熟語より付けました

あぁ、今回もまともなあとがきにならなかった…(´・ω・`)
しかし、長引いても申し訳ないので、この辺でお開きです。
読者の皆様、そしてコラボして下さったエルさん、
おいちゃんに付き合ってくれたネイリ君とゼロちゃんも、
皆様本当にありがとうございました!!
楽しんで頂けましたでしょうか…?
もし楽しんで頂けたのなら嬉しいし、良ければ感想など待ってます!
それでは、今回はこれにてーまた次回ー(。-∀-)ノシ

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yamimui

Author:yamimui
エミルクロニクルオンラインの
二次創作小説ブログです。
自己満足で作ったモノなので、
読む際は自己責任で…

荒らしやクレーム等は
ご遠慮下さい!!

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