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キミと、共に、

 
 
「髪、切って欲しいんだ」


ようやく帰るべき家へと帰ってきた彼女は、

帰宅と同時に何食わぬ顔でそう告げた。

そして告げられた側、彼女の目の前に立つ金髪の青年は

「……………は?」

と、数秒の間を置き、そして突然の注文に困惑した。

「自分でもよく分かんないんだけどさ、
 なんとなく……もう、切っても大丈夫なんだろうなって」

「……あぁ、なるほどな」

それだけ言うと、青年はイスやらハサミやら

髪を切る為の準備を始めた。

彼女が彼女自身と交わした約束事。

それが果たされた時、切ると決めた長い髪。

つまりはそうなのだろう、と青年は察した。

「……聞かないの?」

「聞いて欲しいのか?」

「正直、理由が思い出せないから聞かれても困るかな」

「そんな気はした」

「ホント、綺麗に燃え尽きたんだろうね……欠片も思い出せない」

彼女がその長い髪に繋いだ記憶。

燃え上がり、燃え尽きて、

その約束の記憶は彼女から忘却された。

それでも、

「キズとして、因縁を完了させようとしてるのかな……」

「それじゃあ、まるで呪いだな」

「失礼な、祝って欲しいくらいなのに」

「はいはい」

イスに腰掛けた彼女の髪を、

ふわりと弄びつつ青年は、手にしたハサミを

その赤に溶け込ませ………。




チョキンッ






お決まりのドレスワンピースを脱ぎ捨て、軽くシャワーを浴び、

普段とは正反対のラフな服装に着替え。

今から出るのか、と心配の声にはその長い耳を一切傾けることはせず、

彼女は淡々と自宅を後にした。



とはいえ明確な目的地がある訳ではなく、

ぼんやりと夕暮れ時の街を歩くだけだった。

少しずつ灯り出す街灯、すれ違う人、あちこちから聞こえる音、

しかし彼女の気には留まらない。

心は上の空、視線は下を向いたまま、それでも彼女は無意識に……

「………ぁ」

無意識に、身体が覚えてしまったその場所へとやって来た。

ギルド元宮、その入口の傍らに立っている壊れかけのガイドマシン。

毎日のように通っていたその場所は、

今の彼女にとっては懐かしいと感じる反面、

後ろめたさを感じてしまう場所でもあった。

「………」

―――顔、合わせにくい。

そんな、とある人物との気まずさからか、

彼女は逃げるようにその場を離れるのであった。







「オや?」
「ん?」
「見間違いでしょうカ、今あそこに……」







「はぁーーーーー………」

道行く人々が思わず視線を送ってしまう程の、

およそ女子らしくない溜息が聞こえてくる。

街の片隅のベンチにて、彼女は酷く落胆していた。

あの場所に足を運んでから、思い出したかのように気持ちが渦巻いてしまう。

この感情の解決策が見つからず、相談するにはあまりに些細で恥ずかしく、

先程から悩み続けて今に至る。

「………どうしよう」

会いたい、という純粋な気持ちはある。

しかし、向こうはそうではないかも。

むしろ会いたくない……という可能性は十分にあり得る。

そう考えてしまうと……正直、怖い。

それならば、このまま時間と共に忘れてしまうべきなのでは。

「………私は」




コツンッ、と軽い音。




俯いた視線の先、ブーツと思われるものが目に留まる。

誰かが前に立っているのだろう、しかし今は1人にして欲しい。

と、彼女はその相手を無視した。

「……」

スッ……

そんな中、その人物は片膝をつき、そっと彼女の右手を取り………



「お嬢さん、そんな浮かない顔じゃあ折角の美人が台無しですヨ?」



そう、微笑み掛けた。

「っ……!」

聞き覚えのある声、キザだが不思議と嫌味のない言葉。

一気に意識が引き戻され、反射的に顔を上げ、

目の前の出来事を確認せずにはいられなかった。

確認して、彼女は困惑した。

「フフッ、なーんてね♪」

「え……あっ……ぁ、の………」

目の前にいるのは、紛れもなく『彼』だ。

組織の後輩で、仕事の部下で、信頼するパートナーで、

会いたいが会えないでいた相手。

「……随分と、久しぶりだネ」

「………うん」

何と声を掛ければいいのか、どんな顔をすればいいのか。

答えの出ない彼女は、素っ気無く返事することしか出来なかった。

「……場所、変えようか」








気付けば日は沈み、辺りは暗闇に染まっていた。

街から近いとはいえ、夜の平原に人はいない。

此処なら、2人きりで話せるだろう。

誰もいない平原の片隅で、2人は並んで腰を下ろした。

「ガイド君がキミに似た人を見たって話しててネ、
 なんとなく気になって探してみれば……ってね」

「……そっか」

「髪、切ったんだネ」

「うん………似合わない、かな」

「長い髪のキミしか知らないから、違和感はあったかナ?
 でも、短いのも良いね」

「……どうも」

――気まずい、いっそ逃げ出してしまいたい。

怒られることもなく、責められることもなく、

そこにいたのは普段通りの彼だった。

しかし今の彼女には、その「普段通り」が苦しかった。

いっそ文句の1つでも告げられた方が、どれだけ気が楽か……。

「……やれやれ」

そんな心境を察したのか、彼は世間話を止めた。

止めて、彼女を見つめ直した。

「………あの言葉をキミから聞かされて、その次の日だ。
 キミが突然いなくなってしまったのは」

「………」

「キミん家の誰1人でさえ行方を知らず、ボク達は総出で探し回ったものさ。
 探して、それでも手掛かりすら見つからず、何日も経過した」

「………その」

「正直、ボクは怒ってる」

「……!」

「言うだけ言って、勝手にいなくなって、かと思えば帰って来て。
 キミの身勝手は今に始まったことではないにしろ、
 今回は流石に許容範囲を超えてるヨ」

彼の言葉はもっともだ。

もし自分が彼の立場なら、きっと同じことを思うだろう。

「……ごめん、なさい」

だからこそ、その感情を受け入れる義務がある。

そう自身に言い聞かせ、彼女は声を絞り出す。

続くだろう言葉に、わずかに肩を震わせながら……



「でも、それ以上にあったのは……恐怖かナ」



しかし、続く言葉は予想していたものとは大きく違った。

「…?」

その言葉に呆気にとられながらも、恐る恐るに彼を見た。

「もう、傍にいられないんじゃないかって。
 キミという人が、手の届かない場所に行ってしまったんじゃないか……
 正直、怖くて仕方が無かった」

「………」

少し意外だった。

元々あまり本心を見せない彼が、ここまで言うなんて……。

それ程の思いをさせてしまったことを申し訳なく思う反面、

その言葉が妙に嬉しかった。

「キミは器用だし、以前よりずっと強くなった。
 そんなキミには、ボクなんてただのお荷物でしかないんだろうね」

「そんな訳ないだろっ!!」

「……」

「あ………ご、ごめん……」

つい反射的に、力いっぱい否定してしまった。

急に声を張り上げてしまい、引かれてしまったのでは……。

「……ハハハッ、いやゴメンゴメン。
 予想以上に否定してくれたのが嬉しくってネ」

「……否定が前提なのが、なんか悔しい」

「それだけキミを理解してるってことサ」

「なんだよ、偉そうに………フフッ」

――やっぱり彼には敵わないな。

先程まで渦巻いていた感情が、嘘のように薄れていく。

緊張の糸が解けたように、ついつい笑みが零れてしまう。

「……やっと笑ってくれた」

ようやく見せた彼女の笑顔に、

釣られるように安堵の笑みを浮かべて見せた。

「なんだろうね、一気に安心したのかな……。
 色々とゴメンね」

「今更、ボク達に遠慮なんて不要だろ?
 どれだけ時間が空いたとしても、
 ボクがキミのパートナーであることに変わりはないんだからサ」

「うん………ありがとう」

「どういたしまして」









それからしばらく、2人は時間も気にせず語り合った。

これまでの事、そしてこれからの事、

互いが互いに反省に、罰し、許し合った。

「……本当にいいの?」

「うん、キミにとっても難しい問題だろうからね。
 明確な答えが見つかったら、その時に聞かせてくれれば良いよ。
 あの言葉の続き……どんな答えでも、きちんと聞き入れるからさ」

「……心って難しいものだネ」

「だからこそ、じっくり考えてみれば良いよ」

「……時間、貰うね」

「死ぬまで待っててやるよ」

そっか、と彼はケタケタ笑ってみせた。

いつもの愛想笑いではなく、もっと無邪気で子供のような、

稀に見せるその笑顔はとても………

―――いけないいけない、今はそれよりも。

「それで?」

「ん?」

「そっちのオーダーは?
 お互いにそれぞれお願いがあっての、今の話だし。
 次はこっちが聞く番」

「あぁ、そうだったね。
 いやなに、そんな大したことじゃないから。
 ただちょっと……」

「ちょっと?」

「うん………約束を、して欲しくて……」

「どんな約束?」

「………これはボクのワガママだから、
 もちろん無理なら聞かなかったことにしてくれればいい。
 ただ、もし叶うのなら、ボクは……」


その、照れ臭そうに言葉を紡ぐ彼の横顔は、

どうしてか切なそうにも見えた。


でも、だからだろうか………

そんな彼が、酷く綺麗で、見ていると胸が苦しくなるのは……。



「ボクは、キミの傍にいたいんだ」


夜風に掻き消されそうな優しいトーンで、

困ったように微笑んで、

彼は彼女にそう告げた。




「……ダメ?」

「………」

「……?
 おーい、聞いてる……?」

「………聞こえてる」

「なんで顔を覆ってるんだい?」

「わかってるクセに聞くなよぉ……」

「……それで返事は?」

「……………うん」

「ありがとう☆」

「うぅー………」

―――この確信犯めっ!!

「……あ、でも口約束だけってのも味気ないよネ?」

……何を思ったのか、突然そんなことを言い出した。

「え、何……?
 契約書でも書くの……?」

「流石にそこまではしないけど……そうだな……
 指きりでもする?」

なんてね、と彼は冗談交じりに笑う。

しかし彼女の方はというと、

「………指きりかぁ」

どうも真に受けたのか、真剣な様子で何か考え込んでいた。

「ひょっとして本気にしちゃった?
 いいよいいよ、ジョーダンなんだからさ」

「いや……曖昧ではあるんだけどね、
 指きりを用いた契約があったなぁって……」

「へぇ……流石は魔法使い」

「子供の頃に聞いたものだから断言は出来ないけど、
 確か……誰かと一緒にいられる契約……おまじないに近いかな?」

「なんだか面白そうじゃないか、せっかくだからやってみようヨ。
 それ、ボク達で出来るもの?」

「大丈夫だと思う、えーっとね……」

ゴソゴソ、と彼女はスカートのポケットを漁り出す。

数秒後にそこから彼女が取り出したのは、

「……何でリボンと、装飾前の指輪……かナ?
 こんなもの出てくるんだい?」

「街を歩いてる時に、安かったから買った。
 魔法道具の材料にいいかなーって」

「仕事熱心だね……」

「そんなことはどうでも良いよ。
 契約の手順だけど、男性は金属を、女性は紐……今回はリボンで代用ね?
 これをお互いがお互いの小指に付けて、それで指切りするの」

「それだけ?」

「うん」

「……まぁ、変に面倒より良いか。
 付け方とかにルールは?」

「付ける手が……覚え方が子供の頃のままだから不安だけど、
 利き手と反対の手……左手、だった筈」

「左手ね、りょーかい。
 じゃあ結ぶから、左手だして」

「キツくしないでくれよー?」

キュッ……

差し出した小さな左手、

その手の小指を可愛らしい黒のリボンが着飾った。

器用にも均等に結ばれたリボンに、

彼女もちょっと感動を覚えたらしい。

「嫌味なくらいに綺麗に結んだねぇ……」

「褒め言葉として、受け取っておくよ☆」

「はいはい……それじゃあ、次は私だね。
 ほら、手袋とってとって」

「ハーイ」







「サイズが丁度良かったところで、ささっと指きりしてしまおうか」

「掛け声とかは何もないのかい?」

「うーん……あるのかもしれないけど、覚えてないから良いよ」

「そんな感じでいいの?
 契約って、魔術師にとって大事なんじゃなかったっけ?」

「大事だけど、そもそも曖昧な情報の元でやってるからね。
 それに、こういうのは気持ちの問題だし」

「アバウトだなぁ」

「いいからホラ、指出して」

「はいはい」

なんとも落ち着かない様子のまま、2人は着飾った指を交える。

指きり、なんて子供らしいかもしれないが、

それでも今の2人にとっては、

「……これからも、よろしくネ」

「こっちこそ、また迷惑を掛けさせてもらうよ」

その時間は、心地よいヒトトキだった。

「………そうだ、まだ言ってなかったネ」

「え?」












「おかえり、ビブリア」

「……ただいま、アイアス君」


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この素晴らしい出会いに福音を!

エラトス顔6
エラトス「はい!どうやら少々ノイズが入ったようで、
     前回は別時間軸のとある記録が流れてしまったようだが
     気にせず続きいくぞー!!」

ビブリア顔2
ビブリア「誰に向けて言ってるの?」

エラトス顔1
エラトス「禁じられた箱に残されし、最後の希望の如き存在にだな。
     それはさておき、どこまで話したんだったか?」

ビブリア顔2
ビブリア「えっとね、カナデちゃん?が、可愛い女の子に会いたくて
     頑張るぞーってなったところまでかなぁ……」

エラトス顔1
エラトス「ざっくりバッサリなおさらいご苦労、じゃあ続き話すぞー」









エラトス顔13
エラトス「捜索再開……は、良いんだがな、もう知り合いの当ては尽きた。
     ここからは出たとこ勝負、手当たり次第に体当たりで探していくぞー」

カナデ顔6
カナデ「うん!よーっし、私も頑張るぞー!!」

エラトス顔9
エラトス「となると、まずは順番に現場に戻ってみるか……
     最初は中央、次は南側だったな?」

カナデ顔9
カナデ「うん、そうだよ。
    そこから毎日、必ず前日と違う場所から聞こえてたの」

エラトス顔13
エラトス「場所は日替わり、連日同じ場所には留まらず、っと……。
     何か法則性でも分かればいいんだが、そう簡単にもいかないか」

カナデ顔1
カナデ「どうしよっか?
    とりあえず、まずは街の中央に行ってみる?」

エラトス顔9
エラトス「そうだな、それが無難でベストだろう。
     情報を探しつつ、ついでに街の巡回を担当したけいさt………
     おっと、アクロニアは騎士団だったな。
     そういった人間にも聞き込みしてみるか」

カナデ顔1
カナデ「騎士団さんかぁ……なんだか話すの、少し怖いかも……。
    ちゃんとお話できるかな?」

エラトス顔9
エラトス「なに、街の治安を守る組織の人間だ。
     この街で過ごす以上、街の民をそう無下にはしないだろうよ。
     まぁ、しようものなら土地神として少し仕置きするところだがな。
 
    ……しかし、なんだ。
    今日この辺、やけに人多くないか?」

カナデ顔1
カナデ「なんだろう………あ、見てあれ!
    あそこ、なんだか人が集まってるみたい……」

エラトス顔9
エラトス「こんな街中で野次馬とは、ケンカか?」

『なぁ、これ何の騒ぎ?』『なんでも人が倒れたって』
『えー、やだ怖ーい』『貧血とか?』
『いや、それが急に前触れもなく倒れたんだってさ』
『なんか背中にでっかいゼンマイが付いてる子みたいだぜ』



エラトス顔9
エラトス「………」


『ゼンマイ?』『何だそれ』
『あーあ、綺麗なヴァイオリンだったのになー』
『演奏の途中で意識を失うなんて、可哀想……』
『綺麗な燕尾服だし、何処かのお屋敷の使用人かしら?』
『若いのに苦労してる坊主だな』『え?女の子でしょ?』
『回復魔法でも目が覚めないって、やばくないか……?』
『混成騎士団に連絡しとこうぜ』



エラトス顔13
エラトス「………悪いカナデ、少し用事が出来てしまった。
     すぐ戻るから待っててくれ」

カナデ顔6
カナデ「えっ?あっ、代理さん、そっちは人混み……」

『少し通してくれー……すまん、道を開けてくれー……
 ……あぁ悪い、コイツの保護者の者でして……』











「この度は、本当に申し訳ございませんでしたぁーっ!!」



エラトス顔11
エラトス「俺はちゃーんと言った筈だぞ、ゼンマイが切れる前に帰って来いと。
     動脈のそれに等しいゼンマイが切れれば、エネルギー諸々が途切れ
     機能停止は必須、回復魔法やポーションの類では対処不能。
     巻き直せば解決するが、その事を知っているのは俺達くらい。
     部外者への迷惑は控えるよう、お前の主人も散々言ってきた筈なのに
     どうして今回のような事態になった?ん?」

ビュート顔4
ビュート「は、はひっ……その、本日は、あのですね、
     調律と気候と乾燥と気分が一定数値を超えまして、こっ……ここ数日間で、
     最も演奏に適していると判断しまして……」

エラトス顔11
エラトス「ふむ……それで?」

ビュート顔4
ビュート「少し試奏するだけの予定が、高揚によるエラー発生に伴い、
     意識のプログラムが全て演奏に集中する事態となり、
     その結果が本日の事態でございます……」

エラトス顔13
エラトス「………話は理解したぞ」

ビュート顔4
ビュート「あの、あのあの、どうか、どうかご慈悲を……!!」

エラトス顔15
エラトス「バイオリン、楽しかったか?」

ビュート顔5
ビュート「はいでございます!!」

エラトス顔11
エラトス「反省の色が見えない、有罪」

ビュート顔4
ビュート「Σひぎゃあーーーっ!!
   で、ございますぅーーーーーーっ!!」







「あのぉ……」





エラトス顔9
エラトス「おぉ、悪い悪い。
     ……そんな離れてないで、こっち来いよー?」

カナデ顔1
カナデ「う、うん……
   (誰かが怒られてると、私まで気まずくなっちゃうなぁ……)」

ss20170619_000537.jpg
ビュート「………あ、こちら段差がございますので
     通過の際はご注意下さいませ」

カナデ顔6
カナデ「うん、ありがt…ガッ!
    きゃっ……!」

ビュート顔3
ビュート「!! 支えさせて頂きます!!」ポフッ

カナデ顔1
カナデ「うぅ……(………あれ)」

エラトス顔9
エラトス「おーおー、大丈夫かお前等?
     手当て必要か?」

ビュート顔1
ビュート「……破損被害率0%、姿勢安定、プログラム正常、
     当機の無事を確認しました、問題ありません」

エラトス顔9
エラトス「よし、カナデはどうだ………カナデ?」

ビュート顔4
ビュート「はっ……もしや、転倒の際に負傷されましたか!?
     それとも、支える際の力加減の配分ミスで痛みましたか!!?」

エラトス顔9
エラトス「昔の名残でお前、バカみたいに怪力だからなー。
     油断すると骨折を通り越して粉砕しても可笑しくは……って、
     言ってる場合か、おいカナ……」




「やっと、見つけたよ」




ビュート顔1
ビュート「……あの、お客様?」

カナデ顔9
カナデ「ずっと探してたの、あなたのこと。
    こうして会えて、嬉しいな♪」

エラトス顔9
エラトス「おいカナデ、話が見えないんだが?
     ……あぁ、もしかして会いたがってた件か?
     確かにコイツのことで正解だが……」

カナデ顔9
カナデ「あれ、そうだったの?
    すっごい偶然だね!」

エラトス顔9
エラトス「そういう意味じゃなかったのか?」

カナデ顔3
カナデ「あのね店主代理さん、私が探してた不思議な音……


    あれ、この子から聞こえてきてたみたいなの



エラトス顔9
エラトス「………は?
     ………え、マジでか?」

カナデ顔2
カナデ「さっき受け止めて貰った時、この子から微かにだけど
    聞こえたよ、私の聞いたあの音がね♪
    音楽の守護魔の私が言うんだもん、間違いないの!」

エラトス顔12
エラトス「待てまて、話が背負い魔ブースト装備してるのかってレベルで
     加速し過ぎて追い付けてないんだが?
     え、なに、不思議な音とやらは機械音だったのか?」

カナデ顔1
カナデ「うーん……機械、じゃないと思う。
    なんて言えば分かり易いのかなぁ……
    金属よりは軽くて柔らかくて、木よりも硬くて重みがあって、
    弾むような、響くような、ゆっくりで単調なんだけど
    音が煌めいてるみたいな、すっごく不思議でとっても綺麗な音……

    ………石の、音色に似てるような……?」

エラトス顔9
エラトス「(………まさか。
      しかし、だとすれば……だったら何故……)」


エラトス顔13
エラトス「………ダンビュライト、ここ1週間
     家や店に居る以外、何処で何をしていた?」

ビュート顔1
ビュート「当機の1週間の行動データですね、確認開始致します………
     設定時間中はリベルタス堂の宣伝及び案内作業、
     イレギュラーとして2日前、3日前、6日前には
     道案内のアクションも追加で行っております。

     また、設定時間外の自由行動におきましては
     自主鍛錬としましてバイオリン演奏を試みましたが、
     音出し段階より音程の不安定を確認、
     気候・気温・湿度などの要因から演奏を中断し街の散策へと行動を変更。

     行動範囲はアクロポリスシティに限定、
     主な活動場所は1週間前より順に、
     街の中央、次に南門付近、次にh「もう良い、分かった」

エラトス顔13
エラトス「あーーー………つまり、だ。
     この1週間は街にいて、バイオリンを少し弾いてはすぐ止め、
     その後は街をウロウロしてた、と……そういうことで良いか?」

ビュート顔2
ビュート「はいでございます!」

エラトス顔13
エラトス「次にカナデ、お前に確認するぞ。
     えーっと……お前がこの街にやって来たのが1週間前で、
     その時に謎の音と、共に弦楽器の音を耳にした。
     聞こえたであろう場所に向かうも発生源が見つからず、
     同じ出来事がそれから毎日続いていた。
     ここまで間違いないか?」

カナデ顔10
カナデ「間違いないよー!」

エラトス顔9
エラトス「それじゃあ、もう1つ。
     音楽の守護魔カナデ、お前はもしかして
     オルゴールに縁……なにか、思い入れや関連性はあるか?」

カナデ顔1
カナデ「オルゴール……?
    ………あ、でも、分かる気がする……。

    はっきりと、覚えてるわけじゃないんだけどね、
    私が初めてこの姿になれた時、すぐ傍には小さなオルゴールが
    あったような気がする………。
    小さなお家があって……そこには、オルゴールや、
    綺麗なお人形さんがいたんだ………。
    優しい音色が響いてて……でも、気付くと私は
    この街の近くの草原にいた……」

エラトス顔9
エラトス「そこまで聞けば十分だ、ありがとな」


エラトス顔13
エラトス「……導き出された答えとして、
     まず『カナデの聞いた不思議な音』について、
     答えは『DEMであるダンビュライトの心臓部のオルゴールの音』
     合わせて『ダンビュライトの演奏するバイオリンの音』である。
     次に『音の発信源が見つからなかった』ことについては、
     これはもう『偶然が重なり、入れ違いが続いた』としか言えねぇな……。

     しかし、ここで1つの疑問が浮上する。
     ダンビュライトの心臓部であるオルゴール、
     その音色は普通であれば聞くことはまず出来ない。
     では、何故カナデにはその音が聞こえたのか?」

カナデ顔1
カナデ「……?
    えっと……私が音楽の守護魔で、耳がすっごく良いから?」

エラトス顔9
エラトス「それも正解要素の1つだが、満点ではない。
     100点満点の答えは、
    『カナデは守護魔であると同時に付喪神である』……と、
     いったところだな」

カナデ顔6
カナデ「つくもがみ……?」

ビュート顔1
ビュート「付喪神、長い年月を得た物に神や精霊、霊魂が宿った存在を指す……
     で、ございます」

エラトス顔9
エラトス「一般的に見掛ける守護魔は精霊や霊魂とはまた異なる存在なんだが、
     カナデ……今ココにいるお前個人という存在は、少し特殊みたいだな。
     まぁ、恐らく元々はダンビュライトの心臓部となっている
     オルゴールの付喪神だったお前が、守護魔として具現化。
     予兆はその前から出ていたようだが、完全な具現化に至る
     その発端は………多分、ダンビュライトを転生させる時に
     俺の力が変に反応しちまったんだろうな……。
     カナデは付喪神としての本能から、無意識に本体である
     オルゴールに吸い寄せられ、この街へと辿り着いた」

カナデ顔1
カナデ「(わ、私以上に私のことに詳しい……本当に何者なのかなぁ……)」

エラトス顔9
エラトス 「また、ダンビュライトの心臓部はオルゴールでありながら
      その音は聞こえない……正確には、
      耳では聞き取れない程に微かにしか音が流れてない、だが。
      しかしながら、ダンビュライトは人と同じく感情で動いている。
      感情の高まりからオルゴールの回転速度も並行して加速、
      心音と同じでその分だけ音も大きく激しくなる訳で。
      コイツの場合、バイオリンを弾く楽しさから感情が高まり、
      オルゴールの音が……それでも普通は聞こえないんだが
      一定時間だけ増大した」

ビュート顔3
ビュート「な、なるほど……?」

エラトス顔9
エラトス「そして、だ。
     増大したことによって感じ取れた心音と、
     一瞬のみ響いたバイオリンの音色。
     その2つの音を同時に聞くことが出来たのが、
     オルゴールの付喪神と音楽の守護魔という
     2面を持ち合わせたカナデ、お前だけだった……という訳だ。      

     ………あぁ、2人共よくわかんないって顔だな。
     そうだな、ダンビュライトというDEMにはオルゴールが装備されてて、
     そのオルゴールにはカナデって憑依者がいる。
     本当は御魂の認識に近いんだが……お前等は知らないよなぁ……
     ともかく、まぁそんなゆるーい認識でいいぞ。
     安心しろ、完璧に正確に理解しろとは言わねぇから」

カナデ顔4
カナデ「うぅ~ん……なんか、なんとなくなら分かったような、
    何が分かんないのかが分かんないような、難しいよぉ……」

エラトス顔10
エラトス「細かいことは追々理解していけば良いさ。
     お前にとって今大事なのは、ずっと探していた音の正体、
     そして会いたいと興味を抱いていた当人が目の前に居る、と
     いう事実じゃないか?」

カナデ顔5
カナデ「……フフ、そうだね♪
    ようやく会えたんだもの、今はそれで十分だよね」

ビュート顔3
ビュート「喜ばしい空気の中、大変申し訳ないとは思いますが発言させて頂きます。
     あの、ダンビュライト、お客様の情報を始めとします
     事の経緯や情報の共有が不十分であり、
     お2人の感情の共感などの行動が不可能となっておりまして、
     その………どうしたら良いです?」

エラトス顔13
エラトス「ふむ……これからどうしたいかはカナデ次第、
     カナデの行動からどうしたいのかはダンビュライト次第、だな。
     ……その為にも、まずは自己紹介じゃないか?」

ビュート顔1
ビュート「なるほどでございます」

カナデ顔3
カナデ「それじゃあ、改めてご挨拶……だね♪
    私はカナデ。音楽が大好きで、あなたと仲良くなりたいんだ」

ビュート顔2
ビュート「当機はダンビュライトと申します!
     愛称としまして、我が主人よりはビュートと呼ばれております。
     また、他にも「DEM子」や「従者」などと呼ばれることもありますので、
     どうかお好きな呼称で呼んで頂ければと思います!」

カナデ顔1
カナデ「えぇっ、あとの2つは可愛くないよ……。
    ……じゃあ、まずはダンビュライトちゃんって呼ばせてもらうね?」

エラトス顔9
エラトス「(何で「まずは」?)」

ビュート顔1
ビュート「かしこまりました!
     ダンビュライト、バイオリンに限定されますが音楽と、
     もふもふの動物とオイルを好んでおります。
     不出来な部分もありますが、お見知りおき頂ければ
     光栄でございます、カナデ様」

カナデ顔2
カナデ「こぉーら、ダンビュライトちゃん!
   『様』だなんて、そんな堅苦しい呼び方しちゃダメよ?
    私のことも、もっとフレンドリーに呼んで欲しいな♪」

ビュート顔3
ビュート「し、しかしでございます……親しき中にも礼儀あり、
     とあるように、親睦を深めましても忘れてはいけないことも……」

エラトス顔15
エラトス「面白そうだな、よしダンビュライト!
     今日ぶっ倒れたペナルティーとして命令だ、
     これから『カナデ様』呼びは禁止だからなー」

ビュート顔4
ビュート「Σほぅわっ!?
     え、じゃ、じゃあ………カナデ、殿…?」

カナデ顔4
カナデ「その呼び方もやーだ!
    むぅー……呼び捨て、とは言わないけどさ、
    せめて「カナデちゃん」とか呼んで欲しいの……だめ?」

ビュート顔4
ビュート「あわわわっ……ごめんなさいでございます……!
     しかしながらダンビュライト、不慣れ故に恐れ多さから
     エラーが発生してしまいそうでございますよぉ……」

カナデ顔4
カナデ「むぅーーー……」

ビュート顔4
ビュート「あわ、わ、わっ………えーっとえーっとでございます……
     カ……カナ………」

カナデ顔1
カナデ「カナ……?」

ビュート顔4
ビュート「カナッ……カナ、デ、ちゃ………」

カナデ顔9
カナデ「(ワクワク……!)」

ビュート顔3
ビュート「うぅーーー………ハッ」




ビュート顔5
ビュート「カナデちゃん様!!」

エラトス顔13
エラトス「えらくダイナミックに不時着したなーオイ」




カナデ顔5
カナデ「んー……まぁ、あんまり無理させちゃうのも可愛そうだもんね。
    勿論、慣れてきたらカナデって呼んでくれても良いのよ♪」

ビュート顔2
ビュート「かしこまりました、カナデちゃん様♪」

カナデ顔6
カナデ「(むむぅー……手強いかもしれない……)」

エラトス顔9
エラトス「………ふむ。
     カナデ、今回の依頼料についてなんだが、
     俺からの要望としては『ダンビュライトと仲良くしてやって欲しい』
     たまにで良いから遊びに来たり、何かあった時はコイツの相手をして
     くれれば……と、思ってるんだが、どうだ?」

カナデ顔9
カナデ「! うん、勿論だよ!!
    むしろ、ここまでして貰って良いのかな?」

エラトス顔10
エラトス「最初に言ったろ?
     この店での報酬は『双方が妥当と判断、納得した物』であると。
     俺が希望を提示し、それで納得したのならそれで良いんだよ。
     あぁ、ダンビュライトはどうだ?」

ビュート顔2
ビュート「異論ございません、エラトス神。
     お友達……と、これから沢山会えると思いますと、
     大変嬉しく思います♪」

エラトス顔9
エラトス「決まりだな」

カナデ顔3
カナデ「えへへ、ダンビュライトちゃん!
    早速だけど、色々お話……聞きたいな♪」




…………………

……………

………










ss20170619_002925.jpg
エラトス「……で、それから定期的にカナデは店に遊びに来るようになり、
     よく2人で楽しそうにやってるぞー。
     ダンビュライトのバイオリンとカナデの歌で、賑やかなもんだ」

ビブリア顔1
ビブリア「ふむふむ……2人の因果関係も、中々興味深いねぇ……。
     でも、それ以上に2人が仲良くなれたのは良かったなって思う。
     こういう巡り合わせも、神の気まぐれだったりするのかな?」

エラトス顔1
エラトス「俺が知ってる縁結びのだと、頭かた………真面目過ぎるから、
     運命として事前にそう決まってた可能性が高いけど、
     他の縁結びにはそういった気まぐれを起こす奴もいたかもしれねぇし、
     今度聞いてきてやろうか?」

ビブリア顔2
ビブリア「ロマンの欠片もないからやめて。
     もぉー、ほんっと神様ってば神様なんだからぁー……」

エラトス顔4
エラトス「神様(おれ)を別称みたく使うなっ!!」

ビブリア顔1
ビブリア「あはは、ごめんってば。
     ……ますます、早く帰りたくなってきちゃった」

エラトス顔7
エラトス「……安心しろ、その願いは成就される。
     見てみろ、出口だ」



ビブリア顔2
ビブリア「………やっと、『ただいま』だね。
     そうだ神様、戻ったらお願いがあるんだけど……」






~あとがき~

ようやく書き切れました、今回のお話ヾ(*´∀`*)ノ
カナデちゃんをお招きする機会を入手した時点で
頭の中で大まかな構図は組み立てていたので、
話自体は結構以前から練ってたことになりますねー……?

我が家はアニバーサリーハートのカナデちゃんですが、
他のカナデちゃんだと一緒にオルゴール(家具)も入手できてたような……?
と、曖昧な情報と、我が家のDEM子の設定が合わさり、
今回のオチとさせて頂いております。

加えての、やっと主人公……!
やっと帰って来れたよビブリアさん……長かったねぇ……;
彼女に何があり、何処で、何をしていたのか。
その辺のお話も追々やっていきましょ~。
それでは今回はこれにて!!

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as quick as lightning(エルさんとのコラボ企画)


人々が眠りにつき、静寂に包まれる真夜中。

雲に覆われた空と、時折差し込む月明りが妖しくも美しい日だった。

そんな月明りさえも差し込まない、暗く深い森の中。

たまに微風が吹く程度のその場所で、


『ガキィィィィ………ィイーーーンッ!!』


疾風を巻き起こし、研ぎ澄まされた武器を構え、

殺気と共に牙を剝く2つの影があった。

片方、長い金髪に茶色い獣の尾と耳を携え、両手には禍々しく巨大な爪を構える、

鋭くもどこか儚げで美しい青年。

対するは、鈍く輝く銀の刃、黒い帽子に黒いマント、背には身の丈以上の刀身、

不気味な御面で素顔を隠した不気味な男。

異なる外見、異なる武器、されど共通点が1つ。


『シュッ……!!』


『カタタタタタッ!!』



両者、どちらもイレイザーであった。


『ブォンッ………!!』


影に潜み、闇に生きる2人の抹殺者。

空を裂き、喰らい付き、刃を振り下ろす。

暗闇に包まれた空間で、視ることが困難な状況で、音さえ追い付かない速さで、


『ザァッ……』


沈黙を保ったまま、2人の男は人知れず闘っていた。

「………」

「………」

2人に面識はない、敵でもなければ味方でもない。

偶然、同じ時に同じ場所に居合わせただけだ。

そんな2人が何故、闘っているのか。

理由は至ってシンプルだ。



相手は強い。

故に、挑みたい。




人はおろかモンスターさえ寝静まったこの場所で、

男達は遇い見えた瞬間、相手を見つめ、武器を構え、

微かな風で舞い上がった木の葉がふわり……と地面に落ちた瞬間に駆け出した。

僅かな死角から襲い掛かるクローの一撃と、それを最低限の動きで回避。

回避した勢いのまま突き上げられる短剣、瞬時に回し蹴りで弾くと共に距離を取る。

呼吸を整える間も与えず、どちらかが仕掛ければ防ぎ、そして仕掛け返す。

そんな攻防に始まった闘いは、果たしてどう終結するのか………。
















2時間は過ぎただろう。

今、2人の男は沈黙の中で対峙していた。

どこか、不機嫌そうな視線を送りながら………。

「………おい」

そんな沈黙を破ったのは、御面の男であった。

男の不意の一言に、青年…ネイリの耳はピクリと反応する。

「………」

「こちとら餓鬼の遊びに付き合う気ぃはない、やるならもっと本気で掛かって来ぃ」

その口調は酷く荒々しく無作法で、お世辞にも感じの良いものとは言えなかった。

しかしネイリは表情一つ変えないまま、その言葉をじっと聞いていた。

「………だんまりか」

少々呆れ気味にそう呟くと、男は小さな溜息を




『パキィンッ!!』




………溜息を、零すと同時だった。

その砕ける音は、突如として辺りの空気を一変させた。

はらりはらり、顔を押さえる右手の隙間から、御面の破片は零れ落ちる。

割れた隙間から覗く灰色の眼は、対峙する青年をじっと睨みつけていた。


『刹那』

発動の瞬間に間合いに入り、一撃必殺とも成り得る攻撃を与える

イレイザーの攻撃スキルである。


回避したとはいえ、相手に攻撃の隙を与え、寸前まで反応することが出来なかった。

その事実が男に、クレノーンに与えたのは



相手を少々侮った己自身への憤怒と、

確固たる強さを示した青年への期待だった。




面白い。

クレノーンは内心、笑みを零した。


『ッカァン!!』


しかし、表には決して表さず。

砕けた御面を乱暴に投げ捨てたクレノーン。

そして一層に殺気立った瞳は相手に向けたまま、背負った刀に手を掛ける。

対するネイリは、鋭さを増した殺気に、微かに逆立つ尾を鎮めるかのように構え直す。

今度こそ、互いに本当の意味での真剣勝負になるやもしれない。

張り詰めた糸のような緊張が、

時の流れすらも繫ぎ止めているかのように辺りを張り巡る。

その先にある、勝利を手繰り寄せるのは果たして……



「タ~ヌキ~~~ッ!」



果たして……


「……?」

「………」

緊張の糸を容赦なく引き千切る、あどけない声が木霊する。

2人は声のする方へ同時に顔を向ければ、

「「……………」」

思わず2人は固まった。

そこには茶色いバスケットを抱えたまま走るタイニーと、

それを追い掛けるウメボアの群れ。

そんな、異様な光景が広がっていた。

「……聞いてみるが、あのクマ公は知り合いっちゅーことでえぇんかのぉ」

「…………はぁ」

ネイリは返答の代わりに溜息をつく。

「タヌキータヌキー!ボク、ちょーっとだけピンチかもー!

 手を貸してくれると嬉しいなーっ!!」

本来、あのタイニー…正確にはタイニーゼロは、

ウメボアくらいなら容易に倒せるだけの実力を兼ね備えている。

その筈なのに、何故か追われている。

そもそも、どうしてこの場所に居るのか。

あらゆる理由が分からない。

分からない、がこのまま見捨てるわけにもらしい。

仕方ない、と言わんばかりにネイリはウメボアの群れへと向かおうと……



『ピシィンッ…!』



「……!」

身体が動かない。

何故、一体何が………

「悪いの、ちぃとばかし動かんときぃ」

身体の自由を奪った犯人、それはクレノーンであった。


イレイザーのスキル技の1つ、相手の自由を一時的に奪う技『影縫い』


何の為にスキルを、しかし今はそれ所ではない。

このままでは、タイニーゼロの身が危ない。

ネイリに僅かな焦りと苛立ちが見える。

そんなことは気にもせず、クレノーンは涼しい顏でネイリに背を向ける。

「………それ以上は、間合いじゃけーのぉ」


『シャリンッ………』


背負っていた長い刀剣をすらりと抜いた。

クレノーンは正面を向き直し、一呼吸置き、

その場で軽く弾みを付け、音を立てずに駆け出した。

そして、




『シュンッ………!!』




一瞬、空を裂く音と青白い一閃が辺りに広がる。



かと思えば、ドサッドサッと重々しい音があちらこちらから聞こえてくる。

顔を伏せていたタイニーゼロは、ゆっくりと顔を上げた。

するとそこには、先程まで自分を追い掛けていた筈のウメボアの群れが、

1匹残らず倒れている光景。

そして、目の前に自分を庇うかのように立ち塞がる黒い服の男。

状況はよく分からないが、助かった、ということは確かなようだ。

「……えっと、おじちゃんはタヌキのお友達?」

「………いや」

刀を鞘に納め、クレノーンは質問に対し、目線を合わせるようにしゃがんで返答する。

「違うの~?あ、ボクはタヌキのパートナーだよぉ~よろしくね~」

「ほぉか……」

「ボク、タヌキに差し入れしようと思ってここまで来たんだけど、

 暗くてよく見えなくって………

 間違えてウメボアの寝床に迷い込んじゃったんだぁ。

 大事な差し入れだから守らなきゃって、

 そうしたら手が塞がっちゃって戦えなかったのぉ~。

 でも、おじちゃんが助けてくれて助かったよ~ありがタイニー!!」

「………おいちゃん、別になんもしとらんぞ。

 勝手に助かっただけじゃ、運が良かったの」

「そうなのぉ~?」

「………ほれ、さっさと差し入れとやら渡して来ぃ。向こうで待っとるぞ」

「あっ!そうだった、タヌキー!!」

「………」

影縫いが解除され、身体の自由が戻ったネイリは、

先程より1人と1匹の会話を離れた位置で見守っていた。

事態の収束、そして相手に戦意が無くなったことを察し、

自身もまた構えることを止めたようだ。

とてとてっ、と近付いたタイニーゼロは「はいっ」と、

先程から大事そうに抱えていたバスケットを差し出してきた。

ネイリはそれを受け取ると、蓋を開けて中を確認する。


甘い香りが鼻孔をくすぐるそれは、どうやらチョコケーキのようだ。


「あのね、最近タヌキは夜に1人で修行に行っちゃうでしょ?

 ボクも何かお手伝いできないかなって思ってね、お姉さんに相談したら

『応援をしに行ってあげるだけでも、きっと力になれると思うよ?

 あ、丁度良いや。少し早いけど、よかったら2人で一緒にどうぞ』


 って、貰ったんだぁ~」

「………」

「疲れた時には甘いものが必要だもんねぇ~。

 ボクも疲れちゃったし、一緒にたべよ~♪

 あ、おじちゃんも一緒に……」

思い出したかのように振り返れば、クレノーンは懐からキセルを取り出し、

一服している最中だった。

「……やれやれ」

「あれ、おじちゃんどこ行くのぉ?」

「……興が醒めた、帰る」

「え~?帰っちゃうのぉ~?ケーキあるよ~?」

「いらん」

「えぇ~~~」

「………」



「………おい」



その時、初めてネイリはその場で声を発した。


呼び止められたクレノーンは、スッ…と思わず歩みを止めた。

そんな男の足元へ駆け寄ったタイニーゼロは「はい、これ~」と、

ある物を差し出した。

「……ケーキはいらん言ぅた筈じゃが」

「お礼だって~。タヌキ照れ屋さんだから、ボクが代わりにお届けだよぉ~」

「礼をされることはn「いいから受け取れ」

淡々とした言葉。しかし、じんわり感じられる威圧感。

甘いケーキとは対照的な、まるでコーヒーの如く、その一言は酷く苦いものだった。

そんなに何を怒っているのか…そう不思議そうに思いながら、

男はこの予想外の事態に少し考えた。

考えて、火に油を注いでも面倒で疲れるだけ、と内心呟き、

黙ってケーキを受け取ることにした。

男がケーキを受け取る様子をじっと覗うネイリと、

そんな青年の視線に気付き、視線を移すクレノーン。

互いに戦意は感じられないものの、まだ何処か緊迫したような沈黙。

しかし、自ずと2人の口は動いた。

「………次は、決着を付ける」

「………今以上に強くなれ、小僧」

そんな短い言葉を交わすと、

クレノーンは手掴みのケーキをかじりながら、2人に背を向けた。

そして、そのまま夜の闇へと姿を消していった……。




















「………」

「タヌキ、今日はいつも以上にだんまりだねぇ。

 どうしたの?お腹痛い?」

「……違う。ただ、自分の言葉に驚いていただけだ」

「ん~?何がびっくり驚きだったのぉ?」

「それは………いや、なんでもない」

「そっかぁ。ねぇねぇ、それよりタヌキはあのおじちゃんとケンカしてるの?

 仲悪い?」

「………いや」

「じゃあ、お友達?」

「………違う」

「えぇー?じゃあ、どういう関係なのぉ~?」

「………」

「ねぇ~ってば~」

「………ただの」







「ただの、好敵手というやつだ………ただし。


 お前が来る前は……だがな」










~あとがき~

はい、皆様お久しぶりです(`・ω・´)
今回は今進めてる話から少し寄り道しまして、コラボ第2弾をさせて頂きました!
コラボして下さいましたのは、相互ブログ『夢の中へ繋がる世界』
エルさん、そしてErのネイリ君とタイニーゼロちゃんです!
本当にありがとうございましたヾ(*´∀`*)ノ{めっちゃ楽しかったです!
ネイリ君達について気になりましたら、URLよりエルさんのブログへワープ、
しかとその魅力を堪能して頂ければと(

今回のコラボは、キャラクターさんをお借りして書かせて頂いた、
といった具合でしたが、本当に好き勝手書かせて頂いてしまいました…;
こういうバトルシーンが好きで、男同士の決戦…というのも好きなので、
少し張り切り過ぎてしまいました(苦笑)
ちなみに、タイトルの「as quick as lightning」とは「疾風迅雷」
事態の変化が急なこと、を意味する四字熟語より付けました

あぁ、今回もまともなあとがきにならなかった…(´・ω・`)
しかし、長引いても申し訳ないので、この辺でお開きです。
読者の皆様、そしてコラボして下さったエルさん、
おいちゃんに付き合ってくれたネイリ君とゼロちゃんも、
皆様本当にありがとうございました!!
楽しんで頂けましたでしょうか…?
もし楽しんで頂けたのなら嬉しいし、良ければ感想など待ってます!
それでは、今回はこれにてーまた次回ー(。-∀-)ノシ

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ノーメロディー・ノーライフ

(「不思議の街の、少女と神、と…?」の続きです)




エラトス顔14
エラトス「おーっし、聞き込みだぁーっ!!」

カナデ顔3
カナデ「聞き込みだー♪」

エラトス顔9
エラトス「まずはー…」




ss20170617_231117.jpg
シーホース「お久しぶりです、エラトス様………あら?
      でも随分と小さくなられたような…髪も黒いですし…え?
      不思議な音と、弦の音…?
      いえ…素敵な音色は毎日聞いておりますが、
      特別変わった音は、心当たりがありませんわ…」




エラトス顔9
エラトス「初手はハズレだったなぁ」

カナデ顔1
カナデ「仕方ないよ、いきなり答えに辿り着けるとは思ってなかったし」

エラトス顔13
エラトス「よし、次の場所へ向かうぞ」




ss20170617_230432_00.jpg
アルケー「ごきげんよう、エラトスさん。それと、可愛いお客様も。
     今日はどういったご用件かしら?
     ………なるほど。不思議な音、確かに興味深いですね。
     でもごめんなさい、残念ながら私も知らないわ。
     ところでエラトスさん、随分と小柄になりました?」




カナデ顔1
カナデ「ヴァイオリンをあんな風に使う人、初めて見た…」

エラトス顔13
エラトス「良い子はマネしないでね案件だからな、深く考えるな。
     次いくぞー」




ss20170617_230329.jpg
オリヴィア「んー…先輩の髪が黒く短くなった理由も気になるところですが、
      その音というのも気になりますねー。
      かんぱにーには、そういった依頼は来ていませんし、
      私達も聞いたことないですねー」

クロノス「新しい神魔やアルマの話もないし、
     こちらから提供できる情報は無いわね。
     何かわかったら、また追って連絡しよう」




エラトス顔9
エラトス「悪いな待たせて、まさか仕事を投げられるとは…。
     今日は非番の筈なんだがな、ノーデンスめ…」

カナデ顔9
カナデ「大丈夫だよ、これからこれからー♪
    ………あ、次の場所ってここ?」




ss20170617_230840.jpg
フォルテ「あ、エラトス君!…なんだか疲れてるね、大丈夫?
     え?そんなことより、変わった音について知らないか?
     うーん………俺もライオ君も、ローレライさんも知らないってさ。
     力になれなくてゴメンね?
     あ、そうだ!せめてイメチェンのお祝いも兼ねて1曲…」




カナデ顔2
カナデ「うーん、やっぱり歌うのってサイコー!
    音楽が好きって想いが溢れて、最高の時間だったね♪」

エラトス顔12
エラトス「確かに良いコンサートではあったが、根本を間違えるなよ?
     体力は問題ないにしろ、根気という意味では限界が近いのだが…」




ss20170617_231443.jpg
受付嬢「おぉ、そなたか久しいな。見ない間にイメチェンでもしたのか?
    可愛らs「どいつもこいつもそればっかか!」

エラトス顔11
エラトス「俺の外見は良いんだよ本題だけ聞かせてくれ頼むから時間ねぇんだよ…
     ……あぁ、そう、知らない。わかった、ありがとな。
     カナデ、ここもハズレだ行くぞ」

カナデ顔6
カナデ「あ、うん…(気力が限界だったんだね…)」



……………

………







ss20170617_232218.jpg
エラトス「これまでの経験でいけば、誰かしらは情報を持ってると思ったんだがな…
     空振りばかりで悪いな。
     鎧だって重いだろうに、歩き続けで疲れただろう?」

カナデ顔9
カナデ「んー…まぁ、ちょっぴりね?
    でも今日は誰かと一緒だから、むしろ楽しいよ!」

エラトス顔10
エラトス「ハハッ、元気だなぁ。
     誰かと一緒に過ごすのは好きか?」

カナデ顔3
カナデ「うん、それはモチロン♪
    誰かと一緒に笑うのも、誰かの為に歌うのも、
    誰かに笑顔を貰うのもぜーんぶ大好きよ!
    私を私らしく受け入れてくれる皆が大好きだよ♪」

エラトス顔9
エラトス「自分らしさ、かぁ………。
     アイツは今、自分らしくいられているのだろうか

カナデ顔1
カナデ「アイツって?また例の家主さんのお話?」

エラトス顔9
エラトス「おぉう、聞こえてたのかよ耳いいなホント…いや、今回は別の奴。
     音階に捉われながら、自分らしさを求めし者の話さ」

カナデ顔9
カナデ「! 音階ってことは、その子は歌を歌うのかな?」
 
エラトス顔13
エラトス「少し違うんだが………よし。
     休憩ついでに、少し物語を語ってやろう」

カナデ顔1
カナデ「もの、がたり?」

エラトス顔9
エラトス「そう…音色を心に、淋しい時の流れを糧に今を動く、小さな人形の
    『フィーネに始まる嬉遊曲(ディヴェルティメント)』さ………」

















エラトス顔13
エラトス「………こうして、無事解決しましたとさ。おしまい、ってな」

カナデ顔9
カナデ「不思議なお話だね。不思議で、でも優しいお話」

エラトス顔9
エラトス「…さて、そろそろ再開するか依頼人よ。
     かれこれ数時間経ってるからな、手掛かりだけでも見つけねぇと…」

カナデ顔3
カナデ「はーい」





カナデ顔9
カナデ「ねぇ、店主代理さん」

エラトス顔9
エラトス「……………あ、俺のことか(店主代理さん…)
     どうした?」

カナデ顔10
カナデ「この仕事が解決したらさ、もし良ければだけど
    あのお話の子、会わせてもらうことって出来るかな?」

エラトス顔9
エラトス「あぁ、タイミングさえ合えば可能だぞ?」

カナデ顔3
カナデ「ホント?じゃあ、会ってみたいな!
    音楽が好きな子みたいだから、きっと仲良くなれると思うんだ♪」

エラトス顔15
エラトス「おー、交友関係が生まれるのは良いことだ!
     アイツももっと広く繋がりを持ってほしいからなー」

カナデ顔5
カナデ「…ちなみに、その子って女の子?」

エラトス顔9
エラトス「んー…ボディは「なにも付いてない」ってことで、
     一応は女子ってことにはしてるが…」

カナデ顔1
カナデ「可愛いですか」

エラトス顔12
エラトス「Σぅへ…!!?
     あ、あー………ど、ドウダロウナー、ヒトニヨッテ、ソレゾレダモンナー
    (なんだコイツ、目が真剣と書いてマジと読むやつじゃねぇか)」

カナデ顔2
カナデ「ふふふ、最悪の場合は可愛くしちゃえばいいよね♪
    よーっし、捜索再開!がんばろーっ!!」

エラトス顔12
エラトス「(神は全て知っている…だが、今のは知りたくなかったぜ…女子怖い)」















ビブリア顔2
ビブリア「えー………」

エラトス顔2
エラトス「あー、うん、そういう奴なんだよ…」

ビブリア顔2
ビブリア「んっと………い、一途ってことで」

エラトス顔2
エラトス「物は云い様だな」





(つづく)

不思議の街の、少女と神、と…?

「………こうして、無事解決しましたとさ。おしまい、ってな」

「不思議なお話だね。不思議で、でも優しいお話」

「…さて、そろそろ再開するか依頼人よ。
 かれこれ数時間経ってるからな、手掛かりだけでも見つけねぇと…」







行く人、来る人、お暇な人

是非是非足を止めて

お聞きになってくださいな。


此度語りますは歌い手の物語。

人々に音楽を届け、想いを奏でる

守護せし者の物語でございます…


…………………

………









<かれこれ数時間前>


ss20170405_010946.jpg
「それではダンビュライト、本日も宣伝業務へ赴きたいと思います」

パタパタパタパタッ…


「おー、ゼンマイが切れる前に帰って来いよー。
 …俺も、店の準備でも始めるかー…しかし、」



エラトス顔13
???「やっぱりこの身体、落ち着かねぇなー…」

エラトス顔9
???「…ん?あぁ、ブログをご覧頂いている信者諸君に説明しよう。
    まず、今お前達に語り掛けているこの黒い髪の子供、
    …お察しの通り、神様ことエラトスだ。
    イメチェン?いやいや、そんな軽い気持ちで子供の姿になって堪るか」





ss20170821_235743.jpg
エラトス「とある冒険者は、世界を救う為に戦った。
     そんな冒険者を救う為に、人々は想いを束ねた。
     しかしながら、冒険者は少々特殊だった為に
     今のままでは想いを受け取ることが出来なかった。

     冒険者の生命と、人々の想いを無駄にするわけにはいかない。
     そこで俺は、自ら仲介役として冒険者へと皆の想いを送り届けた…」





エラトス顔13
エラトス「だが予想以上に想いの力は大きく、また受け渡す為のエネルギーも膨大。
     力をかなり浪費してしまった俺は、力の安定値までの回復まで
     最低限の可視化を保てる程度に顕現することにした。
     …要するに、省エネモードってこった」

エラトス顔10
エラトス「ちなみに俺は、元々は闇の色素を取り込んだ黒髪でな。
     回復までは容姿に割り振る力も抑えたいところなもんで、
     諸君の見慣れた金髪モードは少しお休みするぞ。
     まぁ、違和感なんて最初だけだ。その内に慣れるだろうぜ?」

エラトス顔9
エラトス「…しかし、アイツは何処に行っちまったんだろうな。
     早く帰ってこいよ………なぁ、ビb」

チリンチリーンッ

エラトス顔14
エラトス「ヘイらっしゃーいっ!勝手に上がって来てくれーっ!!」




カタンッ
ss20170308_194737.jpg
???「…お邪魔します」

エラトス顔15
エラトス「おーおー、よく来たな!
     …ん?なんだお前、守護魔の類か」

カナデ顔1
???「え?う、うん…。私は音楽の守護魔カナデ…
    えっと………あの、大人の人は誰かいるかな?」

エラトス顔11
エラトス「オイそりゃどういう意味…って、今はこんな姿だったか…。
     人間ってのは面倒だな…少しだけアイツの気持ちが分かったぜ

カナデ顔6
カナデ「あの…聞こえてる、かな?」

エラトス顔13
エラトス「まず言っておくが、こんな見た目でも成人は迎えてるからな?
    (まぁ、人間の年齢に換算するともはや老人すらも超えてるけどな)」

カナデ顔7
カナデ「Σえぇ!?っあ、えっと、あの、ご、ごめんなさい…」

エラトス顔9
エラトス「間違えるのは仕方ない。素直に反省してるなら、それで良い。
     それより立ち話もなんだからな、好きな席に座れよ」

カナデ顔4
カナデ「うん…失礼しまーす…」




ss20170617_232409.jpg
エラトス「さて、改めましてだ守護魔カナデよ。
     ようこそ、リベルタス堂へ。俺は店主代理のエラトスだ。
     今は店主が不在でな、俺が代わりに話を聞こう」

カナデ顔1
カナデ「このお店は、普通のクエストカウンターでは取り合わないようなお願いでも
    手伝ってくれるって聞いて来たんだけど…ですけど」

エラトス顔9
エラトス「無理に敬語でなくて良いぞ?話しやすいように話すが良い。
     次に質問の答えだが、大まかにはその認識で合ってるぞ。
     正確にはいくつかルールがあり、そのルールに従って依頼とする」

カナデ顔1
カナデ「ルールって、お金とか?」

エラトス顔13
エラトス「まぁ、それも含まれるな。
     金の場合もあるが、当店から依頼人に請求する報酬は
    『依頼を担当した職員』が『依頼人に求められる範囲の物』で
    『双方が妥当と判断、納得した物』であること。

     世の中には、金銭不足で依頼を頼みたくとも頼めない、
     相場が分からない、金を使えない理由がある、
     …なんて、色んな理由を抱えてる奴も多いからな。
     そんな連中への救済処置として、リベルタス堂の依頼料は
     金に限らず衣服なり食材なり、家事の代行なんかでも
     依頼人と職員が納得さえすればOKって訳だ」

カナデ顔9
カナデ「あ、それならちょっと安心だね♪
    私も、あんまりお金持ってないから不安だったんだぁ」

エラトス顔9
エラトス「だが、どんなに依頼料が良いものであろうと、此処での依頼は
    『あくまで我々が引き受けることが出来る』と判断したものに限る。
     俺達だって万能じゃねぇからな、出来ないことは出来ないぞ?

     だが、逆を言えば「出来ることは何だってやる」…それがこの店さ」

カナデ顔1
カナデ「へ、へぇ…(なんだろう…一瞬だけど、ちょっと不気味な雰囲気…)」

エラトス顔13
エラトス「そしてお前は運が良いぞ、守護魔カナデよ。
     他の職員が公休だったり出払ってたりで不在な中、
     土地神であるこの俺が担当するんだからな。
     2足歩行ロボに乗った気で、ドーンと安心するが良いぞ」

カナデ顔1
カナデ「(あ、この人ウヅキさんと同じタイプの人だ)」

エラトス顔9
エラトス「おっと、そういえばまだ依頼内容を聞いてなかったな。
     今回はどういった要件で?」

カナデ顔6
カナデ「うーん…探し物、かなぁ?」

エラトス顔9
エラトス「探し物?何か無くして、それを取り戻すタイプか?
     それとも、何か持っていないものをを求めてるタイプか?」

カナデ顔9
カナデ「多分、後者だと思うよ。求める…なんて、大袈裟なものじゃないけど、
    少し気になることがあるの。
    で、それについて調べるお手伝いをして欲しいんだ」

エラトス顔15
エラトス「あくまでも依頼は助力であり自身が率先して動くその姿勢、
     実に良いことだ。
     よし、詳しい話を聞こうじゃないか」

カナデ顔3
カナデ「ありがとう♪じゃあ、少し聞いてくれる?」



カナデ顔1
カナデ「私がこのアクロポリスにやって来たのは、つい1週間前なの。
    街で私にそっくりな子を見掛けたことがあるかもしれないけど、
    その子と私は、似てるけど別人だからね?

    私、こんな大きな町に来るのは初めてだったから
    観光も兼ねて、その日は街を見て回ってたの。
    そうしたら…夕方くらい、だったかな?
    不思議なが聞こえたんだ」

エラトス顔9
エラトス「音?」

カナデ顔1
カナデ「うん。私は音楽の守護魔だから、音には敏感なんだ。
    その音が聞こえて来た時、私は街の西側に居たの。
    何の音だろう?って、気になって駆けつけようと思ったんだけど、
    音が聞こえてくる方向…街の中央だったと思うんだけど、
    向かってる途中で音が止んでしまったの。

    到着した時、辺りを探してみたんだけど…」

エラトス顔13
エラトス「それらしき人物も物も、何も無かったと」

カナデ顔3
カナデ「ううん、むしろ楽器を持ってる人がいっぱい居たよ♪
    私が聞いた音じゃなかったけど、皆で演奏会もしたの!」

エラトス顔11
エラトス「そっちかー

カナデ顔6
カナデ「それで、だよ?
    その次の日、お昼頃からまた同じ場所を探してみたの。
    そうしたらその最中、今度は街の南側からその音が聞こえてきたんだ。
    急いで向かったんだけど、やっぱり音はすぐに止んでしまって、
    その場所には…何も無い、じゃなくて、人も物もいっぱいで、
    それらしきものが見つけられなかった。

    でも私、諦めずに毎日街を探し回ったんだから!
    だけど………流石に1人じゃ限界だよぉ」

エラトス顔13
エラトス「ふーむ…概ね把握したぞ。
     依頼内容は「正体不明の音の捜索」、その手助けだな。
     それに伴って確認するぞ?
     まず、その音が聞こえたのはアクロポリスにいる間だけだったか?
     街の外に出た時にも聞いたりは?」


カナデ顔1
カナデ「うーんと、多分…街の中でだけだと思う。
    何度か外も探してみたけど、聞こえてくるのはいつも街の中からだったもの」

エラトス顔9
エラトス「なるほど。大まかに言えば、範囲は街の中に限定される、と。
     その音ってのは、時間帯はバラバラみたいだが
     毎日聞こえてたのか?」

カナデ顔2
カナデ「あくまで私が来た日から、だけど、毎日だよ。
    そこはしっかり覚えてるから、まかせて欲しいな♪」

エラトス顔9
エラトス「ふんふん………場所はアクロポリスに限定され、
     時間帯は不規則、期間は毎日、と………。
     カナデ、お前の他にその音を聞いた人間は?」

カナデ顔4
カナデ「んー…それが、私以外だーれも聞いてないんだって…。
    空耳じゃないかって…そんなことないもん(プーッ」

エラトス顔9
エラトス「もしかすると、耳が余程よくないと聞こえないくらい小さいのかもな。
     だとすると、尚更アイツの方が適任かもしれねぇなー…
     ま、居ない以上は仕方ねぇ」

カナデ顔1
カナデ「不在だっていう、店主さんのこと?」

エラトス顔10
エラトス「おぅ。俺達の店主で家主の、眠り姫気味な神の愛娘さ。
     そいつも耳が良くってな………その話、今は置いておかないとな。
     まずは依頼を進めようぜ?」

カナデ顔5
カナデ「ふふ、じゃあ落ち着いたら聞かせてもらおうかな、その眠り姫様のこと♪」

エラトス顔9
エラトス「それは構わないがカナデ、俺は大事なことを聞いてなかったぞ。
     そもそも、お前の聞いたっていう音、それはどんな音だったんだ?」

カナデ顔3
カナデ「すっごく不思議で、とっても綺麗な音!」

エラトス顔11
エラトス「答えになってない、やり直し」

カナデ顔7
カナデ「Σあぅっ!
    え、えーっと…あんな音、私も初めて聞いたから
    上手く例えられないよぉ……………あ」

エラトス顔9
エラトス「何か思い出したか?」

カナデ顔1
カナデ「うん。不思議な音にばかり気を取られてたけど、
    その音が聞こえる時、必ず一緒に弦の音がしてた筈だよ」

エラトス顔9
エラトス「弦、というと楽器に付いてるワイヤーみたいなアレか?
     ギターとかに使う、あの…」

カナデ顔10
カナデ「そう、それ。何か心当たり、あるかな?」

エラトス顔12
エラトス「いや、あり過ぎて困ってるっつーの。
     お前それ、ウァテス系SUほぼほぼ全員に該当するからな?
     あの職業の専用武器は楽器、
     それもギターやハープといった弦楽器がほとんどだ。
     加えて、街に滞在してるウァテス系の冒険者なんて数知れず…
     範囲は狭いようで、その数は膨大だぞ」

カナデ顔4
カナデ「そんなぁ…じゃあ、見つけるのは無理、かな…?」

エラトス顔13
エラトス「…いや。多少時間は掛かるだろうが、
     最低でも手掛かりくらいは見つけられるだろう。
     俺の知り合いに、演奏家な先輩や音楽好きの同級生、
     不思議な現象に詳しい後輩なんかもいる。
     その辺りを筆頭に、まずは聞き込みから始めるか」

カナデ顔9
カナデ「! うん、私も頑張るね!」

エラトス顔15
エラトス「そうと決まれば、善は急げだ!
     あくまでも俺がするのは手伝いだからな、
     気合入れて頑張れよー!」

カナデ顔8
カナデ「んっ♪期待しててよね!」



 














エラトス顔6
エラトス「一旦スタジオに返しまーす!」

ビブリア顔4
ビブリア「スタジオって何!!?」




(つづく)「Σこの流れで!?」
 
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自己満足で作ったモノなので、
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