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ホワイトデーのお話(詠羅さんとのコラボ企画)

時期はバレンタインから1ヶ月になろうとしてる頃だった。

バレンタインもそうだったが、来たるホワイトデーは何を作るかなーと、
夕飯の買い出しに赴きながら考えていた。

そんな時、街灯の下で偶然目に留まった1人の男。

翼も光輪もないことから、エミル族であることは明白だった。

茶色い髪にハッキリとした顔立ち、
白を基調とした服装、(少々小柄ながら)しっかりとした身体つき。

俺からすれば、どんな人間もそこまで差は感じない。所詮は「人間」なのだから。

しかしその男は違った。一目見て、そう思った。

その男から感じたのは「人ならざる何か」の気配、
そしてそれ以上に「人を引き付けるオーラ」…とでも、言っておこう。

俺はその男を「面白い」と、その時から興味を持ち始めた。

そんな男を見ていると、雑誌を片手に遠い目をしているように感じた。

あの男は…何か、悩んでる…?

俺はビブリア程ではないけど、それでも結構気まぐれな性格だ。

興味があった、ただそれだけの理由で、俺はその男…キリヤナギに話し掛けたんだ。


「ごきげんよう、迷える子羊よ」


…開口一番、なんでこんな話し方なのか?

今の俺は、タイタニア族をベースに肉体を持つ冒険者、JOBはナイト。

だがそれ以前に、俺はドミニオン界の土地神である。

たまには神様らしく振る舞わなくてはな、神としての威厳や存在が保てない。

…これ真面目な話だからな?あぁ分かってる、お前も大事な信者だもんな。

でも、信者は多いに越したことはないってもんだ。

奴は俺が声を掛けると、最初は混乱したように、

「あの……、僕は、エミル・ガーディアンのキリヤナギです。
治安維持部隊の総隊長をしています。失礼ですが、貴方は……?」

と、自己紹介をしてくれた。混乱はしつつも礼儀正しい。

だが俺はお構いなしに、俺が神であること、
そして悩みがあるなら相談に乗る、という旨を伝えた。

…俺が神であると名乗った時、苦い顔をしたのは大目に見てやろう。

しかし余計に混乱させてしまったのか、中々返答が返ってこない。

まぁ、その気になれば心や記憶を覗いて悩みを知ることも出来た。

でも初対面でそれをするのもあれだ。なので念の為にもう1度、

「悩んでいるのだろう? さぁこの神に話してみよ」

と、声を掛けた。…うっせ、偉そうとか言うな実際偉いんだよ!

…コホンッ。とにかく、だ。

どう返答したら良いか分からない、という様子のキリヤナギ。

このままではキリがない。そこで俺は、

「ホワイトデーのお返しに悩んでいるようだが、お前は料理が苦手か。複雑だな」

と、言った。奴は一瞬、驚いたように俺を見た。

驚くのは無理もない。今思えば、心を見透かされた訳だからな。

…実際はどうなのかって?

持っていた雑誌がチョコレートのカタログだったことから推測し、
そうではないか、とカマを掛けた。

実際、そのカマは見事に掛かった訳だ。

それならば、と俺は奴に「手作りのお返し」を勧めることにした。

ホワイトデーはバレンタインに貰ったお菓子や気持ちに対し、
感謝や返事を送る大事な日。

食べる相手を想い、時間を掛けて想いを込めて、食べて貰い想いを届ける。

その一瞬の幸せが、料理にはあるのだと俺は考える。

これは俺の勝手な持論だが…なんとなく。そう、本当になんとなくだが、
俺はキリヤナギにはこの持論、そしてお返しについての想いを訴えたくなった。

最初は渋っていたが、少し挑発してみれば…すぐに話に乗ってきた。

「僕は進んでやらないだけで、料理もやろうと思えばできます。
その上で執事がやることを雇い主がやるのは、仕事を取り上げる事になりかねない」

そこまで言うのなら、と俺はある提案をした。

俺は一週間の期限を与え、奴にクッキーを作るように言った。

少々強引だったかもしれないが、奴はその提案を承諾した。

ますます面白い奴だ、と思った。

挑発したのは俺だが、ここまで乗って来るとは思わなかった。

話が決まった所で、俺はその場を後にした。

「神は挑発的な言い方はしたが常にお前の味方だ。それは忘れるなよ」

そんな一言を残して、な。





かんぱにーに顔を出したり、露店を覗いてみたり、
いい素材を探しに遠出する時もあれば、家でのんびり過ごす時もある。

器があるだけで、体感時間というのは大きく違うものだ。

これだけのことで、1日があっという間に終わってしまう。

今日もそんな気まぐれに、着の身着のままに過ごし、あっという間に日が暮れる。

そろそろ戻るか…。そう思いながら、家へと向かっている時だった。

以前にあの男と出会った街灯の下で、不意に俺は立ち止まった。

そよ風程度の風と一緒に、微かに甘い匂いがした。

この匂いは…

「こんばんは」

声のした方を向けば、そこに居たのはキリヤナギだった。

その手には袋があり、どうやら甘い匂いはここかららしい。

…うむ、間違いない。これはクッキーだな。

しかし、予想以上に早いな。…あれからすぐに実践してくれるとはな。

俺の言葉が届いたような気がして、なんだか少し嬉しかった。

まだうまくできない、と奴は言っていたが、それでも構わない、
と、俺はその手にあるクッキーを所望した。

些か不安そうに見つめながら、男はクッキーを手渡してきた。

「ふむ、見た目は悪くない」

袋から取り出したクッキーは型崩れもほとんど見られない、
実に美味しそうなクッキーだ。

見た目は合格だな…さて、味はどんなものだ…?

俺はクッキーをゆっくり口へと運んだ。

………。

「不味いな」

「……はい」

我ながら容赦ないと思う。向こうも自覚があったらしく、素直に受け止めたらしい。

正確には「不味い」のではなく、「物足りない」が正しいがな。

ダイエット用のものならともかく、普通のクッキーであれば甘さが足りない。

牛乳にこの間のギンモクセイ酒を少し加えてこのクッキーを漬け込んで、
カスタードクリームと一緒にグラスに詰めて、コーヒーパウダーを仕上げに
ティラミスにしたら美味そうだが…いや、活用案考えてどうすんだよ!

そんな誰にとも分からないことを胸の内に秘めつつ、
気を取り直して俺はクッキーの感想を述べた。

甘さが足りない。何かトッピングが欲しいところだ。
そして、やはり料理は素人なのだろう、と。

図星だったのか、奴は言葉を詰まらせ、俺から目を逸らす。

料理に関して素人であることは始めから分かっていたので、
そこまで気にはしていないし責めるつもりもない。

それに、

「だが、作れる事に対しては嘘ではなかった。以前の言葉を撤回しよう」

「不味い」のではなく「物足りない」のであれば、それは些細な失敗。

料理が出来る、という言葉は嘘ではない。

…そういう事に、しておこう。神は寛大だからな。

意外そうな顔をするキリヤナギを横目に、俺は更なる提案をする。

提案とは…そう、俺が直々に作り方を教える、だ。

料理も戦闘も、経験は多い方が良いだろうからな。

場所は…道具なんかもあるし、ウチで良いだろう。

…家主に無断で約束したことは、悪かったと思ってるぞ。いや、マジで。
(※後程、家主にこっ酷く怒られました)

「……わかりました。よろしくお願いします」

男は俺の提案を素直に承諾した。うむ、素直なことはいいことだ。

では、また明日に。と、言おうと思った時だ。

キリヤナギの背後から、別の人物の声がした。

先程から後ろに控えているな、とは思っていたが、そこには
黒髪に眼帯、ホークアイの職服に身を包んだ長身の男がいた。

キリヤナギはその男をグランジ、と呼んでいた。

…なるほど、主と従者の関係か。

この男も相当に鍛えられてるらしい。身体の軸は一向にブレることはなく、
警戒を怠ることなくこちら側を見ている。

…しかし、グランジとかいうこの男、なんか見てると修行だとかで
家を空けてるゾリューシュカを思い出す。

アイツ、ちゃんと飯食ってるかなぁ?

「グランジ、大丈夫だよ。この人は僕の神様だから……」

そんなことを考えてる間に、奴は警戒する従者への補足をしてくれていたらしい。

しかし「僕の神様」か…ビブリアにとっての神であれれば良い、
そう考えて過ごしてきたからか…この言葉は妙にくすぐったいものだ。

俺に敵意がないことが分かると、従者の男は静かに一歩引く。

そして話は、先程の提案に戻る。キリヤナギは、

「神様、グランジは僕の従者なので一緒にきてもいいですか?」

と、従者の同伴を求めてきた。なので俺は、

「構わないぞ。1人ではつまらないからな」

と、無論ながらに承諾した。

そうなると…明日の夕飯、多めに用意するかな。




更に次の日のことだ。

掃除用のクロスを片手にキッチンの流し台を掃除し、
ボウルや計量カップといった必要な道具を並べ、
夕飯用の食材の在庫確認をする。

…よし。掃除は普段からしてるからそこまで必要じゃなかったし、
道具も準備OK。夕飯も、昨日から作り置きしてた
ロールキャベツもあるし、あとは煮込んだり副菜を用意すれば良い。

時間も良い頃合いだ、そろそろ向かうとするか…。

一通りの準備を終えた俺は、少しそわそわしながら家を出た。

向かうはお決まりの街灯の下。

街灯の下へ到着すると、そこで俺はあの男を待つ。

とりあえず俺は、まず料理するのが好きなので料理がしたい。

その機会があるだけでも楽しみだが、更に今回は信者と共に、である。

この胸躍る高揚感、何百年ぶりくらいだろうな?

………おっ、来たな。あの2人、身長差もあるからか街中だと割と目立つなぁ。

少し日が暮れ始めた頃、キリヤナギとグランジがやって来た。

俺は簡単に挨拶をすると、早速2人を飛空庭へと案内した。

上がって早々にキッチンへ向かうつもりだった。が、

「エラトス神、戻られていたのですか?」

不意に聞こえたドアの音。そして、聞き馴染んだ声と呼び方。

声のした方を向けば、そこにはよく知る2人の人物。
1人は俺自らが導き、DEMへと転生させたダンビュライトの姿が。

そして、この飛空庭の家主にして店主、
手塩にかけて育てた大事な娘、ビブリアも一緒だった…。

普段通りに接したいところだが、信者の手前そうもいかん。

俺は神様口調を維持しつつ、来客を招いてキッチンを使うことを伝えた。

2人もどうやら、これから外出するらしい。

「夜には戻るから、お留守番お願いね」

何食わぬ顔でそれだけ言うと、ビブリアとダンビュライトは出口へ向かう。

…考えすぎだったか。嫌な予感がしたのだが、何事もないようだ。

見送りの言葉を掛けて、2人が出て行くのを見送る。

…筈だった。が、ビブリアはすれ違い際に耳元で囁いた。

「今回は大目に見るけど、此処での身勝手は程々にね…?」

そして、そのまま何事の無いかのように庭を後にした。

…やべぇ、目が笑ってなかった。

「エラトスさん?」

内心焦る中、不意に呼ばれてハッと我に返る。

キリヤナギは不思議そうに俺の名前を呼び、不思議そうに見詰めてくる。

…そうか、俺からは名乗ってなかったな。

このエラトスという名前も、冒険者として生活するうえで使う
言わば「偽名」ではあるが。

俺は簡単に、今現在の冒険者としての俺の自己紹介、
本来はドミニオン界を守護する土地神であること、
気付くと人の姿であったこと、そして今は此処で暮らしていることを伝えた。

流石に嫌でも分かるが、やはり奴を混乱させたらしい。

話についていけない、と顔に書いてある。

それでも俺は話し続けた。

神は人から望まれ、そこに存在を許されるのだ、と。

「じゃあ、信じる人が……いなくなったら?」

なんて奴は心配そうに尋ねてきたが、どうだろうな。

それは俺にも未知の領域。神とて、知らないことはあるってことだ。

それに、そんなことはどうだっていい。俺がやることは変わらない。

たった1人でも、俺を望み、信じる者が居るのなら、そいつの為に力を尽くそう。

「キリヤナギ。お前が私を神だと信じるならな」




…もう、二度と差し伸ばされた手を掴み損ねない為に。





気を取り直し、本題のクッキー作りを始めることにした。

奴が持参した材料とエプロンを準備し、レシピを探してる間、
俺は俺でクッキーを作り始めることに…なんだよ、話の途中で遮るなよ。

ん?目の前で実演したのか?当たり前だろ、その為に呼んだんだから。

…どんな手順だったのか?変なこと聞くなー…ふっ、しかし、そこは俺の予想通り。

こんなこともあろうかと、事前にレシピを書き起こしてー…って、Σあぁーっ!?

何で斜線引くんだよーっ!!あー…折角用意したのにひっでーなぁ…

こんな常識外れなレシピ、公に出来ない?え、何か変だったか?


~クッキーの作り方~
材料:巨麦粉、砂糖、バター

1.まず始めに「チャージストライク」で巨麦粉のムラを無くし、
  そこに砂糖と溶かしたバターを加える。
2.菜箸などの材料を混ぜやすい道具を装備し、「スピアサイクロン」でよく混ぜる。
3.均等に混ざったら、「ブロウ」で弾力が出るまでこね、生地を完成させる。
4.生地が完成したら、「衝撃波」で均等な厚みになるよう生地を引き延ばす。
5.生地を型で抜いたり包丁で切る等し、クッキーの形を形成する。
6.シートを敷いたトレーに、間隔をあけてクッキーを並べる。
7.炎のコロンを使用した武器(刺剣がオススメ)を構え、
  クッキーの表面ギリギリに「ライトニングスピア」をし、焼き上げる。
8.粗熱が取れたら完成。お好みでトッピングをしても良し。




まぁでも、流石に素人がただ見せただけで作れるわけはないからな。

そこはちゃんと、分量の割合や作業の目安なんかを教えたつもりだ。

…そうそう、クッキーの型を持参したのは驚いたな。アレ、俺も欲しいくらいだ。

なんて発見をしつつ、従者グランジが見つめる中、
俺達のクッキー作りは順調に進んでいった。

出ていた2人が戻ってきたのは、そのクッキーを今まさに焼き始めた時だった。

家の中ってこともあって、普通にオーブンで焼いたからな?

その後は知っての通り、クッキーを焼く合間に夕飯の用意を進めていた俺は、
客人2人も含める全員分の食事を準備した。

そして夕飯の途中で焼き上がったクッキーは、食後のデザートも兼ねて
全員で試食した、という訳だ。

俺が作ってる以上、失敗することはまずないが、
それでも予想以上に美味しい、とキリヤナギは思ったらしい。

食べた直後、驚きと感動が顔に出ていたぞ。

そんなキリヤナギは、試食を堪能するとテキパキと帰宅の準備を始めた。

俺は今回の体験や書き記したメモ、そして記憶として残るだろう味、
これらの経験を活かし、残り短い期限の中で納得のいく一品を作れるよう、
細やかながらの鼓舞と、そして楽しいひと時だったことを伝え、
いつもの街灯の下で、彼等の帰りを見送った。





そして同時に、心に穴が開いたような違和感を感じた。








時間は何時だったのか、それすらも覚えていない。

気が付くと、俺は1人ウテナ湖に来ていた。

仕事でも、修行でも、依頼でもなく、理由無きままに訪れた。

…あぁ、訂正しよう。訪れた理由はあった。

この場所は、俺が祀られてた湖と少し似てるような気がする。

だから、懐かしさに駆られて、無意識に引き寄せられたのかもしれない。

今は無き、俺が土地神として見守ってきた世界。

その世界を見続けてきた、俺の湖(せかい)。

しかし、その見守る世界が無くなった今、その湖も役目を果たせない。

そして俺自身もそう…土地神としては、もう役目など終わっているのだ。

約束の為、そしてあの子と共に居たいと、自らこちら側へ来た事に後悔はない。

それこそ、土地神という立場を捨て、自らの消滅さえも覚悟した程だ。

だがどうだ、実際は人の姿を持つことを許され、尚且つ土地神でもある。

信者など、もういないに等しい筈なのに。

どうして俺は、生かされているのか。

何故、俺はこのような中途半端な存在になったのか。

なんで…いつから、俺はこんな風になってしまったのか。

自分で自分が理解出来なくなる、意思が纏まらない、

怒りとも悲しみとも憎しみとも妬みとも恨みとも虚無感とも、

どれとも違う感情が渦巻く、

進むことも止まることも戻ることも変わることも、

何も出来ない叶わない

話す事でもない、話したところでどうにもならないこの想い。

その想いを、俺が延々と渦巻かせていた時だった。

カサッ、と草の音が耳に届く。

…俺は振り返ることはせず、意識だけをそちらに向ける。

出会って1週間にも満たないが、それでも共に過ごした時間は大きい。

俺を知っていて、神を名乗るような俺を探す人の良さ。

そして、嫌になる程に染み付いた、甘く香ばしいクッキーの匂い。

少なくとも俺には、これらに該当する人間に1人しか心当たりがない。

怒ってるのか気を使ってるのかは、何も言わないままに、
奴は…キリヤナギは、静かに俺の隣に腰掛けた。

俺から話を切り出せば、奴は怒ることも誤魔化すこともせず、
淡々と語ってくれた。

俺を探すのに苦労したこと。

ナビゲーションデバイス※が繋がらなかったこと。
(※各世界の人口の9割が所持している高性能電子端末(ECO世界におけるスマホ)。
 JKな奴ら2nd!!世界観設定より参照)

ビブリアが心配していたこと。

それらを一通り語り終わると、男は俺に尋ねた。

「……何故、こんな場所に?」

…と。

「少し考えたい事があった」

…我ながら不思議なものだ、意識はしていなかった。

だが、無意識のうちに勝手に口が動き、俺は語った。

この渦巻く想いについて、そう想ったきっかけについて、
きっかけが、あの時の一言にあったことを。

俺の言葉を聞くと、男は自分を責めるような表情を見せていたので、
誤解の無いよう訂正を入れる。

別に怒っている訳ではない。

怒りなどではなく…そう、ただ「疑問」だっただけだ。

俺は、俺自身が何なのか、自分自身の存在が疑問だったのだ。

そんな俺に、きっと奴は掛ける言葉が見つからなかっただけなのだろう。

たった一言、キリヤナギは呟いた。


「神様……」


そこで俺は気付いた。

そうだ。今の姿形は関係ない。

俺は、土地を守護せし神である。

そして、そんな俺を「神様」と認識し、呼び掛ける者が居る。

俺が俺(かみ)である理由、それにこれ以上の理由が必要だろうか。

「……そうだな。私は神だ」

落としていた目線を上げ、身体ごと隣に座るキリヤナギへと向ける。

そして、吹っ切れた俺は、奴にこう宣言した。


「信者キリヤナギ、今日より俺は、
 冥界の土地神から、アクロポリスの土地神に鞍替えをする」


この言葉に、男が目を丸くしたのを今でもよーく覚えている。

どうせ今は野良の神様みたいなもんだ、だったら良いじゃないか。

俺を信じる者が居る。その者の為に、その者の守るものを見守ろう。

誰かを護るこの騎士を、俺は見守ってみたいと思った。

故に、俺に迷いは無かった。

「分かりました。神様、アクロポリスをお願いします」

今度は言葉を詰まらせることなく、真っ直ぐと返答が返ってきた。

その、確かに「俺」を見詰める瞳に誓うとしよう。



俺は、この信仰とも友情とも慈悲とも違う、

しかし確かな「想い」に応え、未来を歩むこの土地の民を見守ろう。

存在が朽ち果て、消え去るその一瞬まで、な…。









ss20170313_225950.jpg
エラトス「…と、報告はこんなところか?」

エラトス顔1
エラトス「あとは知っての通り、話を終えた後、送り届けられる形に無事に帰宅
     そして約束の期限の日、無事に奴はクッキーを完成させた。以上」

ビブリア顔1
ビブリア「はーい、お疲れ様。…うん、あとはこれをもう少し纏めればいいかな?
     …でも、実際心配はしたんだよ神様
     私もこの前、皆に黙って出掛けたから強くは言えないけど」

エラトス顔1
エラトス「神様だって悩んでるってことだ。まぁ、お互い程々にしないとなー」

ビブリア顔2
ビブリア「…ねぇ、神様。どっちの神様が本当の神様なの?」

エラトス顔2
エラトス「…? どっち、ってのは?」

ビブリア顔1
ビブリア「今みたいに砕けた感じの…言ってしまえば『人間臭い』神様と、
     あの人の前で見せてた『土地神として』の神様、
     どっちの顔が、神様が神様らしくいられている時なのかなって」

エラトス顔7
エラトス「お前本当に鋭いよなぁ…どっちも俺だよ
     冒険者としての俺も、土地神としての俺も、家族としての俺も、
     どれも俺であって、そこには差なんてありはしない
     年上に敬語を使う感覚と一緒だな」

ビブリア顔1
ビブリア「なるほどね…。じゃあ次だけど、神様…その、割と重要だと思うけど
     …鞍帰りって、ホントにやるの…そもそも、出来るの?」

エラトス顔2
エラトス「あーそれなー…。それがな、ダメもとではあったが
     上位神に了解を貰いに行ってみたんだ。断られたら無断で居座る気構えで」

ビブリア顔2
ビブリア「なーにやってんだか、このバカミ様は」

エラトス顔2
エラトス「変な呼び方すんな!…で、だ。そこからは俺も予想外の言葉が返ってきてな
    『アクロポリスもだが、ドミニオン世界も
     どうせ今そこまで神は必要とされてないし、
     もう2つともお前に任せるわ。
     影響が出ない程度に好きにしなー』…って、WでOK貰った」

ビブリア顔4
ビブリア「神の世界ブランク過ぎんだろ!!」

エラトス顔3
エラトス「神も千差万別、十人十色だからなーはっはっはっ!」

チーンッ

エラトス顔1
エラトス「おっ、焼き上がったな」

自分の趣味でやるには珍しく、ちょっとレトロな薪のオーブン。

その重い扉を開くと、部屋中に漂う嗅ぎ慣れた筈の、
でも懐かしさを覚える甘い焼き菓子の匂い。

奴は無事に、渡すことが出来ただろうか。

想いを、気持ちを、しっかりその手で込めたものを。

そんな些細なことを考えながら、俺は焼きたてのクッキーを口に運ぶ。





~あとがき~

久々の更新、そしてにも係わらずの長文…!
重ね重ね、申し訳ありませんm(__)m

今回は我らが神様、エラトスのお話でした。
ふふふ、季節ものを書くのもそうですが…今回、素敵なことに
よその子さんとのコラボが実現!!感激です!!(´;ω;`)
詠羅さんと、詠羅さん宅のキリヤナギさんと共演させて頂きました!
↓コチラより、side違いのお話が読めます。うちの子も出てるので是非読んで!(
JKな奴ら2nd!!
まさか、お気に入りイリスカード「アクロポリスのガーディアン」さんと
共演する日が来るなんて…詠羅さん、本当にありがとうございました!!

これを機に、お友達なんかとも共演できないかなぁ…なんて|д゚)
さてさて、流石にもう長くなり過ぎてしまいますね…;
今回のコラボ、少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです(*´ω`*)
是非是非、感想なども頂けると泣いて叫んで転がって喜びます(
その際は、是非とも「JKな奴ら2nd!!」さんへもお忘れなきようお願い致します(笑)

それでは今回はこれにて!読んで頂きありがとうございました!!
そして改めまして、詠羅さん!本当にお世話になりっぱなしでしたが
ありがとうございます!素敵で楽しい企画を、ありがとうございましたーヾ(*´∀`*)ノ
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No title

大作の完成、お疲れ様です
以前のエアECOサミの記事やメニューなんかもそうでしたが
世界観の細かい取り決めや描写が丁寧だなぁといつも思います

他の人とのコラボレーションということで
色々と得るものがあったんじゃないかなーと羨ましくも
すごいなぁと感心してます
何かまた新しい更新予定もあるようなので、頑張って下さいね

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Re: No title

To.エルさん

いつもながら、コメント本当にありがとうございます。
いつも励みと活力とさせて頂いてます。

今回のコラボ、発端は本当に偶然のような出会いに始まり、
嬉しいお話を頂いての今回、となりました。
初めてばかりで緊張や不安、焦りで目まぐるしいながらも
結果として無事に完成出来て良かったです。
同じテーマでもこんな展開が来るとはなぁ…と、
世界観や物の捉え方の違いなど、色々と学ぶことが出来たかと思います。
今回を機に、エルさんともいつかコラボ…なんて、図々しい夢を見たり(笑)

ほのぼのとした展開もですが、同時にハラハラ・ドキドキ
時に切なくなるような、少年漫画のような展開が好きな私なので、
今後はそういったものも書きたいな、と考えている次第です。
長くなりましたが、読んで頂きありがとうございました。
応援も、お応え出来るよう今後もマイペースなりに頑張ります!
プロフィール

yamimui

Author:yamimui
エミルクロニクルオンラインの
二次創作小説ブログです。
自己満足で作ったモノなので、
読む際は自己責任で…

荒らしやクレーム等は
ご遠慮下さい!!

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